CPAP(持続陽圧療法)

リンク:CPAPがうまくいかない12の理由

CPAPとは : continuous positive airway pressure (持続陽圧療法)のことです。

nCPAP(nasal continuous positive airway pressure)経鼻持続陽圧療法と記載されることもあります。

日本では1998年に保険収載されています。

簡単にいうと、CPAP装置からホース、マスクを介して空気を気道へ送り、常に圧力をかけて空気の通り道が塞がれないようにします。

 

CPAPは閉塞型SASの治療法です。

 

適切に使用することで、ほぼ完全に睡眠中の無呼吸を消失させることができ、熟眠感が得られるようになり、目覚めがすっきりします。基本的にこれを付けて眠れたらOKということです。

 

ただし、無呼吸のある方に誰でも適応というわけではなくて
どのような方につけるかの判断は無呼吸検査で決まります。

 

日本の基準では、簡易検査でAHI40以上、あるいはPSG(終夜睡眠ポリソムノグラフィー)でAHI20以上がCPAPの適応となります。(下記でくわしく説明しています。)

 

CPAPを付けて眠るには違和感があったり、抵抗があるという方もいらっしゃいますので、いろいろな方法で上手く使えるように支援していきます。

 

CPAPの原理

CPAPは渦巻きポンプの羽根車を電気で高速回転させることにより、羽根車の中心から吸い込んだ空気に高流量の「空気の流れ」を作る送風装置(flow generator)です。

 

患者側の呼吸回路の鼻腔近くに呼気孔を設けることで、高流量の空気の意図的リークを作りながら、一定の圧を上気道にかける仕組みです。送気流量を増減することで、設定圧を調整しています。

 

現在のCPAPは、常時一定の圧が気道にかかっているわけではありません。CPAPの基本特性は、自発呼吸時には吸気圧が低下し、呼気時には呼気圧が上昇することです。

CPAPの圧設定

nCPAPの効果を十分に発揮するためには、適正な圧設定が重要です。

 

理想的には、PSG下で鼻マスクを装着し、無呼吸が出現したら圧力を1〜2cmH2Oずつ上げていき、一晩を通じていびき、無呼吸が認められず、SaO2が90%以上を保つように設定します。

 

通常は4〜15cmH2Oの圧力を用いることが多いのですが、重症度が高く肥満が著しい場合にはそれ以上の圧力が必要になることもあります。

 

圧力が低すぎると効果が不十分になり、高すぎると吸入する空気の量が増えて患者の不快感が増大するため、適切な圧設定はその後の治療効果を左右する重要な行為です。

 

 

最近は、CPAPの機器が自動的に無呼吸を感知し、圧力を供給するAuto-CPAP機器が頻用されているが、今後さらに理想的な機器になるよう改良がすすんでいくことを期待したいと思います。圧設定については、固定がいいのか、自動がいいのかについてまだ議論のあるところです。

 

メリット デメリット
固定圧 ほぼ最強の圧に合わせるため、ほとんどの無呼吸が消失し、残AHIが少ない。 圧が強すぎて覚醒してしまうことがある

 

自動(Auto CPAP) 無呼吸イベントの強さに合わせて、圧が変わるので優しく感じられる。 無呼吸イベントの変動が大きい場合は、Auto CPAPの機能が追い付かず、覚醒を起こすことがある。

 

 

CPAPの適用

CPAPの適用は、我が国ではPSG上 AHI (apnea hyponex index:無呼吸低呼吸指数)>20で日中の傾眠などの自覚症状を伴う場合。

 

あるいは簡易睡眠モニター上RDI (respiratory disturbulance index:呼吸障害指数)>40で自覚症状を伴う場合と定められていますしかし、世界的な基準ではAHI>30は無条件、5<AHI<30で症状がある場合に適用とされており、今後は日本の適用基準も変化していくかもしれません。

 

CPAPの使用時間は1週間の半分以上で4時間以上が望ましいと言われていますが、原則は患者さんが日中の眠気を感じない時間を基準とします。

 

使用時間が同じでも、就寝時間が遅い場合や、中途覚醒が多い場合は眠気が残るので、CPAP使用時間帯を確認し、必要に応じて睡眠衛生指導を行うことがすすめられています。

CPAP治療の論点

CPAPの最大の問題は継続率です。

 

文献によってばらつきがあるが、導入から3年後の継続率は30~70%とされます。

 

CPAPが継続できない大きな理由のひとつに鼻閉があります。

 

CPAPは鼻から圧をかけるので、もともと鼻閉のある方にCPAPをつけてもうまく機能しなかったり、圧が高くなりすぎたりします。

リンク:鼻づまりと睡眠時無呼吸について

 

サイト管理人は耳鼻咽喉科医の立場ですので、鼻閉を全く評価せずにCPAPを導入されたものの、継続できなかったという声をたびたび耳にすることがあります。

 

実際には、内科でCPAP治療をはじめてもらったものの、それまで気にならなかった鼻閉を強く自覚するようになりご来院される、というケースです。

 

そのうち、強い鼻中隔湾曲症を認め、鼻閉の一因になっている場合には、CPAP継続のために、鼻づまりを改善する手術(鼻中隔矯正術)を行っています。術後はCPAP装用困難がなくなり、よい睡眠環境を得ることができます。

 

リンク→鼻中隔弯曲症の原因と治療〜短期手術で治せます

↑注:現在の施設で、年間50件以上を担当している鼻中隔手術についての記載です。

 

CPAP装用を目的とした鼻腔形態改善手術は、CPAP導入の際に検討すべき項目と考えています。

耳鼻咽喉科医が導入した場合は、比較的CPAP継続率が高いとする報告があります。1)

 

CPAPのマスクは鼻から、あるいはマスクによっては、口も塞いで圧をかけるので、当然のことながら、鼻も見ずにCPAPを開始するのは乱暴だなと思います。

CPAP治療は、耳鼻咽喉科以外にも、内科、精神科、呼吸器科、循環器科など、さまざまな科から開始の判断が下されます。

 

すでにCPAPを使われている方も、耳鼻科医が関わると、もっと装用しやすくなる可能性がありますので、ぜひご相談いただきたいと思います。

 

CPAP治療を継続してもらうために

CPAP治療を継続してもらうためには、なぜCPAP治療が必要なのかを患者さんによく理解してもらう必要があります。

 

CPAP治療が必要な第一の理由は心筋梗塞や脳血管障害など致死率が高く、重篤な後遺症をきたす心血管障害の発症を抑えるためです。

 

重症のOSASでは無呼吸が見られないコントロール群に比べて2〜3倍心血管障害が起こりやすく、CPAP治療によって有意に心血管障害の発症率は低下するとされています。2,3)

 

一方、患者さんがOSASの治療に希望する第一の理由は日中の傾眠傾向の改善です。CPAPによって著名に日中傾眠が改善する場合もあるが、眠気が残存することも多いです。

 

CPAP導入時に、自覚症状の改善を強調しすぎると、患者の期待と実際の効果のギャップからCPAPへの失望が高まり、継続意欲がそがれることがあります。重症のOSASにCPAPを導入する時には、合併症の併発を防ぐためにCPAPを導入することを強調すべきといえます。

CPAP機器とモード

現在のCPAP機器では、オートモードの圧コントロールが改善され、以前に認められたような不必要に高い圧力がかかるような減少はほとんど見られません。

 

オートモードと固定圧モードで、自覚症状の変化、CPAP使用時間、生活の質などを比較した最近の報告ではオートモードと固定圧モードに有意な差はみられないとされています。4)

CPAP治療の有効性

SASは高血圧をはじめとする種々の循環器疾患と直接的に関連することが大規模研究から明らかになっており 5,6)、例えば、SASの重症度が高くなるほど高血圧の頻度は増加する3)がCPAP治療群は対照群と比較して有意に血圧が低下することが報告されています。7)

 

CPAP治療の長期成績として、CPAP治療群では重症例(AHI>30)の致命的心血管イベントを有意に減少させ、健常者と同等にまで死亡率を低下させるとの報告があります。2)

 

参考:医師から見たCPAP管理のポイント

CPAPを保険適応で始めると、基本的に月に一回外来で診察をして、CPAP機器が記録している患者さんの睡眠情報を解析した結果について説明しています。CPAPが上手く使えているかの評価と、継続して使えるように支援する場です。

実際にはこのようなことに注意して、お話しています。

 

平均AHIが5以下であるか。

 

リーク時間:加圧がマスクよりどの程度リークしているか。長い場合、圧やマスクが適切ではない可能性がある。

 

平均使用時間:4時間以上であることが望ましい

 

使用時間が4時間以上である割合が70%以上が望ましい。

 

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費用対効果がとても良いと思います。おすすめです。

 

 

参考文献

1)Tokunaga T, Ninomiya T, Kato Y, et al: Long-term compliance with nasal continuous positive airway pressure therapy for sleep apnea syndrome in an otorhinolaryngological office. Eur Arch Otorhinolaryngol 270(8): 2267-2273,2013

2)Marin JM,Carrizo SJ, Vicente E, et al: Long term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet, 365: 1046-1053,2005

3)Yaggi HK, Concato J, Kerman WN, et al: Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med, 353: 2034-2041,2005.

4)Vennelle M, White S, Riha RL, et al: Randomized controlled trial of variable-pressure versus fixed-pressure continuous positive airway pressure (CPAP) treatment for patients with obstructive sleep apnea/ hypopnea syndrome (OSAHS). Sleep,3: 267-271,2010.

5)Pappered PE, Young T, Palta M ,et al. N Engl J Med 2000; 342: 1378-1384

6)Shahar E, Whitney CW, Redline S, et al: Am J Respir Crit Care Med 2001; 163: 19-25

7)Faccenda JF, Mackay TW, Boon NA, et al; Am J Repair Crit Care Med 2001; 163: 344-348

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