このページではアレルギー性鼻炎の発症機序〜治療について解説します。
内服薬や外用薬にてアレルギー反応をコントロールします。
その方の症状にピッタリ合う処方を一緒に考えます。
アレルギー性鼻炎の患者さんが1年中来院されますが、
特に花粉症のシーズンには、市販のお薬を飲んでも
「ぜんぜん効かない! 眠い!」
という訴えがよく聞かれます。
筆者も、花粉症にとても悩まされてきた経験があります。
耳鼻咽喉科医になり、ありとあらゆるアレルギー性鼻炎の治療を自身でも試してきました。
近年は、副作用もほとんど感じられず、効果も良いお薬がいろいろ出てきています。
こういった新しい薬剤は、ドラッグストアにはまだ出回っていません。
お鼻の状態や薬剤の好み、ライフスタイルに合わせて、病院でお薬を処方することで
お困りの程度はかなり改善できると考えています。
専門家(学生時代にアレルギー性鼻炎で大変苦しみました!)が関わるとどこまで快適になるか、ぜひお試しいただきたいと思います。
アレルギー性鼻炎ってどうして起こる?
鼻の中に、侵入してきた特定の物質(抗原)を自分以外の物質(異物)と判断すると、それを無害化しようとする反応が起こります。
その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が過剰に出てくる病気をアレルギ-性鼻炎と言います。
原因になる物質(抗原)にはいろいろな種類があります。
主なものとしてはハウスダスト(ダニなどの家のほこり)、スギ花粉、イネ科花粉、ブタクサ花粉、真菌(カビ)、ペットとして飼っているイヌやネコの毛などがあります。
アレルギ-性鼻炎は決まった季節だけに鼻の症状がおきる季節性アレルギ-性鼻炎と、
一年を通じておきる通年性アレルギ-性鼻炎に分けられます。
花粉症はアレルギ-性鼻炎のひとつで、草花の花粉が原因です。季節性アレルギ-性鼻炎の代表的な病気です。ただし、花粉症では鼻炎の他にも、結膜炎や咽頭炎など鼻以外のアレルギ-性炎症もおこります。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりなど鼻の症状が長く続くため、生活の質(QOL)は、心身ともに低下します。
鼻づまりによる口呼吸のために、のどの渇きや痛み・かゆみ、頭痛を訴えることもあります。その他には、不眠、授業中の居眠り、イライラ感、全身倦怠感や集中力の低下など学業への影響が出ることもあります。
アレルギー性鼻炎のカスタム治療
アレルギー性鼻炎の治療は
抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド点鼻が3本柱です。
他にも作用機序の異なるお薬や、漢方の処方がたくさんあります。
お薬一種類だけでコントロールできるような軽症のアレルギー性鼻炎であれば、治療は比較的簡単です。
ただし通常、第一選択になることが多い抗ヒスタミン薬だけでも、かなりの種類の薬剤が出回っているので、薬剤選択には
耳鼻科医の勘どころがあります。
つまり、診察所見や、ご本人の症状、生活環境、
どのようなお薬の飲み方を希望するか、どのようなお薬であれば継続して効果を得やすいか
など、一剤選ぶだけでも、ベストの薬剤選択をするために、耳鼻科医はいろいろ考えています。
一種類のお薬ではすっきりしない場合、併用可能な薬剤を追加します。
薬剤の組み合わせに決まったやり方はなく、患者さんに合わせて考えます。
アレルギーのお薬を2種類も飲むのですか?と驚かれる患者さんもいますが、
治療のガイドラインでも推奨されているやり方で、
点鼻も含めての3種類併用は中等症以上のアレルギー性鼻炎ではよく用いられる処方です。
いいお薬でも、続けて飲めなければ、当然ながら治療効果は乏しくなるので、
特に花粉がたくさん飛散しているような時期は続けられることがとても重要です。
慢性副鼻腔炎や喘息など基礎疾患がある方には、それも考慮に入れた上で治療を行います。
マスクの使用など、花粉への暴露を避けるための工夫も指導します。
カスタム治療の補足:
耳鼻科で処方するアレルギー性鼻炎のお薬には、大きく作用機序の違うものがあります。
ドラッグストアで販売されているアレルギー性鼻炎の内服薬は、通常、抗ヒスタミン薬という系統のものです。この類が一番ポピュラーなアレルギー性鼻炎のお薬といえます。
病院で処方されるアレルギー性鼻炎の治療薬には、抗ヒスタミン薬以外にも、上記のようにロイコトリエン拮抗薬や、鼻噴霧ステロイドなどもあります。それぞれの薬剤に特徴があるのですが、抗ヒスタミン薬を2剤用いることは保険診療上の問題があって通常認められません。
そこで、別の作用機序のお薬から一つずつ選ぶことになりますが、
ここでの薬剤の選択によって、効果に大きな違いがでてきます。
薬剤により一日の内服回数も異なりますし、剤形も内服と点鼻があります。
内服を複数、点鼻薬合わせて行い、さらに漢方なども併用する場合など、組み合わせのやり方は、無数にあります。
お困りの症状や、お鼻の状態、薬剤の好み、ライフスタイルに合わせて処方し、
しばらく内服していただいた感想をお聞きして、薬剤を最適化していきます。
複数のお薬を内服する際は、継続してお薬を使用してもらえるように、どんな症状に対して処方されているものか、
どのような内服方法、点鼻方法をすると効果的なのか、しっかりとご理解いただくことが重要です。
ご自身で納得して症状をコントロールできるようにお手伝いします。
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アレルギー性鼻炎についての補足
●季節性アレルギー性鼻炎
季節性アレルギー性鼻炎の代表であるすぎ、ひのき花粉症は現在増加している疾患です。
鼻症状だけでなく、眼症状、皮膚症状さらには呼吸器症状など重症化してQOLを低下させやすい疾患です。
西日本では、ヒノキ花粉のほうが多い地域もあります。
●有病率について
2008年の馬場らの報告では、スギ花粉症の有病率は26.5%という値が報告されています。
その10年前の1998年の報告では16.2%であったので10%以上も増加していることになります。
年齢ごとの増加率では、5歳から9歳の増加率が高く、1998年の7.2%から2008年の13.7%に増加しています。
同様に通年性アレルギーの有病率は、1998年の18.7%から2008年は23.4%に増加していると報告されています。
●くしゃみと鼻漏の程度は強く相関するので、両者をまとめて くしゃみ・鼻漏型とし、鼻閉が他の症状と比べ特に強いときは鼻閉型とします。両者がほぼおなじ場合は充全型とします。
アレルゲン免疫療法 (舌下免疫療法、皮下免疫療法)について
上記の内服治療の他に、根治治療を目的とした免疫療法も広まりつつあります。
5歳以上のアレルギー性鼻炎に対し、内服薬によってスギ花粉症とダニアレルギーの治療が可能です。
数年単位での治療を行うため、時間がかかりますが、唯一根治が望める治療法です。
以前はスギ花粉症の治療薬はシロップ状でしたが、近年タブレットタイプの舌下錠が流通するようになり、より取り組みやすい治療になりました。
当院でも多くの患者さんが免疫治療をがんばっています。
とくにダニアレルギーは、治療に反応しにくい強い鼻詰まりを起こすことがあるので
免疫治療の効果が期待される病態です。
アレルゲン免疫療法のメリットは、治癒の可能性があること。
また、完全な治癒までいかなくとも、薬物の量が減らせる可能性があること。
治療を止めた後も効果が持続する可能性があること。
他のアレルゲンの感作や喘息の発症を予防できる可能性があることなどです。
スギ花粉症の最終兵器ともいえる ゾレアについてのご紹介はこちら
私自身、スギ花粉症で大変苦しんできたのですが、ゾレアという注射のお薬を使ってみてどうなったかについて
解説しています。アレルギー性鼻炎のない世界にいってきました...
外科治療について
鼻中隔湾曲症に加え、下鼻甲介肥大などの鼻腔形態異常を有するアレルギー性鼻炎は薬物療法やアレルゲン免疫療法では十分な効果が得られにくく難治です。この場合、鼻閉の改善を目的として鼻腔形態改善手術が考慮されます。
↓鼻づまりを改善する鼻中隔矯正術についての説明はこちら↓
高度な鼻閉を伴う症例では、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症のいずれにおいても、鼻アレルギー診療ガイドラインでは手術が推奨されています。
難治性の鼻漏に対しては後鼻神経切断術が選択肢となります。原法では翼口蓋レベルで後鼻神経と蝶口蓋動脈を一塊に切除していましたが、仮性動脈瘤による大量の遅発性術後鼻出血を生じることがあり、現在では神経を選択的に切断するか、下鼻甲介粘膜下を走行する抹消枝を切除する方法が一般的です。当院でもこの方法で手術を行っています。
骨の成長期である小児に対する手術は、議論のあるところですが当院では通常、身長が伸びるのが止まるくらいまで待機して鼻中隔矯正術を行っています。
小児に対しては、下鼻甲介粘膜(レーザー)焼灼術をおこなっています。
花粉症でお困りの方はご相談ください。
はるか耳鼻咽喉科
電話 0725-50-3333
耳鼻咽喉科専門医:抗加齢医学会専門医:
中西 悠