このページでは鼻中隔湾曲症による鼻閉について、
手術以外の治療法を解説します。
鼻中隔湾曲症は鼻の中の壁が強く曲がっている状態のことをいいます。
基本的な考えとして、高度な鼻中隔湾曲症の治療は「手術が第一選択」です。
できれば手術はしたくないという方も多いでしょうし、
骨の成長が旺盛な時期には骨に操作を加える手術は控えたほうが良い、という考え方があります。
このページでは手術以外の方法で、鼻の通りをよくするやり方について説明します。
通常の鼻中隔湾曲症の治療については
鼻中隔湾曲症の原因と治療のページで、詳しく解説します。
当方は、よほど高度な鼻中隔湾曲症でない限り、
身長の伸びが止まる18歳くらいまで待機して手術を行うようにしています。
(男性の場合18歳〜くらい。女性だと15~17歳くらいで手術することもあります。)
だだし、鼻閉が高度で学校生活に支障があったり、
睡眠呼吸障害を強く疑わせる訴え(夜間に目が覚める、日中の眠気、早朝の頭痛、倦怠感など)
があれば、睡眠状態の評価の上、早めに手術を行うことがあります。
このページでご提案している手術しない治療(保存的治療)は子供の鼻中隔湾曲症の治療にも当てはまります。
手術以外の治療ということになると、内服薬、外用薬を用います。
広義には手術に該当しますが、切らない治療という意味で、鼻粘膜のレーザー治療も有効です。
それでは 順番に解説します。
内服治療
アレルギー性鼻炎の治療に用いるロイコトリエン拮抗薬を用います。(モンテルカストやプランルカスト:いずれも市販品なし。処方薬のみ)
抗ヒスタミン薬に比べて、安定した効果発現までに数日かかります。効果がすぐに感じられなくても、継続することが大切です。
鼻汁、くしゃみなどアレルギー性鼻炎の症状がある場合には抗ヒスタミン薬も併用します。
☆
参考製品(市販の高ヒスタミン薬の中では眠気など副作用が少ないものです。)
鼻中隔湾曲症に加えて、アレルギー性鼻炎を伴う方には有効な事が多いです。
採血によるアレルギー検査でアレルゲンの特定ができない方でも、自覚的な鼻閉についてはある程度改善されることが多いです。
アレルギー性鼻炎に対し、内科で処方されているケースでは、抗ヒスタミン薬のみということも多いのですが、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬の併用はとても効果的です。
外用薬(点鼻薬による治療)
ステロイド点鼻薬を用います。これもアレルギー性鼻炎の治療でよく用いられるものです。
最近は市販の点鼻薬でもステロイド含有のものが売り出されるようになっていますが、すこし古い世代の薬になります。
☆
参考製品(下記製品はステロイド主体で比較的おすすめできるものです。血管収縮薬系(ナファゾリン塩酸塩含有のものなど)は継続使用をおすすめしません。)
1日2回使用 即効性に乏しいですが、上記の内服薬と併用して数日継続すると、鼻粘膜の腫脹がとれて、鼻閉の改善が期待できます。
☆
内服のステロイドと異なり、点鼻薬は外用ステロイドですので、血中濃度の上昇などは上昇しにくいものですが、なるべj副作用を避けるために、血中濃度が上がりにくく、鼻の局所だけに作用するお薬が望ましいです。
病院で処方する新しい世代の点鼻薬のほうが、血中濃度が上がりにくく、安全性が高いと考えられています。
ステロイド点鼻は「医師の指導観察のの下に使う分には安全性の高いお薬」と考えていただいて良いと思います。
妊婦さん、授乳婦さんにも処方できます。
ドラッグストアやCMでは、病院で処方する成分と同じ、という文言をよくみかけますが、
「実は昔、病院で処方されていた成分と同じ。病院処方だと、もっと新しく副作用が少なくて、良いものが主流になっている。」
というところは教えてくれません。これは内服薬においても同じことがいえます。
☆
現在、病院で処方している新しい世代の点鼻薬は、新商品として出てきた際に、「以前のものより、さらに安全性が高い」ということを売りに、
新薬への切り替えを推奨されてきた経緯があります。
というわけで、ステロイド点鼻を使用する必要があれば、できれば病院で処方薬がより望ましいということになります。
病院で処方する、最近のステロイド鼻は1日1回使用のタイプです。
作用時間が長く、効果も以前の1日2回タイプに遜色ないので、おすすめです。
古い世代のものに比べて薬剤の匂いや刺激なども少なくなっています。
より良い効果をえるための点鼻のコツとして、お風呂上がりに使用することをおすすめしています。
鼻閉の強い方でも、入浴後は鼻が通っていることが多いからです。
成人の場合、片方の鼻に2プッシュの製剤が多いのですが、まず鼻の穴にいれて、点鼻薬を水平にして、まっすぐに後ろに1プッシュ。次は眉間の方向を向けて1プッシュすることで、すこしでも広範囲に薬液が届くように、とお伝えしています。
☆
できれば、鼻出血(点鼻薬の副作用のひとつ)予防のために、なるべく鼻中隔に当たらないよう少し外側に向けて噴霧すると良いです。
市販の点鼻薬で、ステロイド含有でないタイプのものは、血管収縮薬が入っているものが多いです。
使用すると一時的に鼻粘膜が収縮し、それはそれは快適に鼻が通ります。
しかし繰り返し使用することで鼻粘膜の慢性的な腫脹を生じることがあり、とてもガンコな鼻閉を生じることがあります。
このような状態を薬剤性鼻炎といいます。市販の安い点鼻薬などはたいていこの系統です。
鼻粘膜のレーザー治療
手技上は手術に含まれるのですが、切らない治療のひとつとして、鼻粘膜のレーザー治療が可能です。
鼻中隔ではなく、鼻腔の両脇の壁にあたる下鼻甲介の粘膜表面をレーザーで焼灼します。
ガーゼを鼻の中にしばらく置くことによる局所麻酔で行います。
外来で日帰り治療が可能です。
小児でも、鼻の処置ができる小学校の高学年以降くらいなら可能です。
ただし、鼻中隔弯曲が高度な場合、レーザーの機器先端が鼻の奥まで届かなくて、処理できる範囲が限られることがあります。
このあたりは、レーザー治療の前処置(痛いと処置できない)や、医師の技術力や経験にかなり左右されるところです。
全くレーザー機器が入らないほどの高度の鼻中隔湾曲症というのは少ないので、それなりに有効な方法と考えています。
問題点は、鼻汁、くしゃみなど鼻症状に対する効果の持続期間に個人差が大きいこと。
ずっと調子のいい方もいらっしゃれば、1~3シーズンで効果が乏しくなったと感じられる方もいます。
鼻閉の改善ということについても、私自身の経験ではおおむね良好な結果が得られますが、効果持続については個人差が大きいです。
必要があれば、何回でもトライできる優しい治療なので、調節性がある、という風にとらえれば悪い点とはいえないところでもあります。
つまり、小児でもトライしやすい治療をいえます。
その他の治療
西洋薬で効果が乏しい場合には漢方薬を併用することがあります。
小青竜湯を用いる事が多いです。
鼻閉でお困りの方は ぜひご相談ください。
遠方の方も対応可能です。
市販のもので、ときどきしのぐ、程度でコントロールできる方はそれで良いと思います。
鼻閉でいつも困る方、特に夜間に鼻閉のある方は睡眠に影響する可能性があるので、積極的な治療を検討する余地があります。
昼間の鼻閉改善のみでなく、夜間の睡眠状態を改善できるよう配慮して形態を整えます。
鼻閉でお困りの方は、お電話でお問い合わせください。
大阪 和泉市の耳鼻咽喉科
電話 0725-50-3333
耳鼻咽喉科専門医:中西 悠