味覚・嗅覚 耳鼻科専門医が解説

味がわからない〜味覚障害の治療〜

 

このページでは、味覚障害」 味がわからない状態について解説します。

 

ご飯がおいしく感じられなかったら、本当に困りますよね。

味覚障害の症状

味がわからないという状態は大きくわけて2つあります。

1:量的味覚障害

もうひとつは

2:質的味覚異常です。

順番に解説します。

 

まず、量的味覚障害は以下のようなもの。

味覚低下(味が薄い)

味覚消失(味がしない)

解離性味覚障害(特定の味質のみしない)

 

次に、質的味覚異常があります。

 

自発性味覚障害(何もたべていないのに特定の味がする)

 

異味症(普段と味が異なる)

 

悪味症(何ともいえない嫌な味になる)

 

味覚過敏(特定の味質のみ きつく感じる)

 

味覚には血清亜鉛の値が関係することが知られていますが、血清亜鉛値が正常範囲である質的味覚異常では原因が亜鉛欠乏でない例も多く、亜鉛内服療法に効果を示しにくいとの報告があります。

 

味覚の検査

電気味覚検査:定量的に測定可能。簡便。

濾紙(ろし)ディスク法 手間がかかるので、実際にはあまり行われていません。

 

検査はあくまでも検査、調べて評価しているだけで、治療になるわけではありません。

 

 

 

味覚障害の原因

味覚は 味細胞が集合した味蕾という器官で感じられます。

味蕾は 舌に70%、のこりの味蕾30%は咽喉頭(のど)にあります。

この味蕾は、加齢や貧血 が原因で萎縮したり消失します。

ここで上記のの 亜鉛 が出てくるんです。

 

亜鉛が足らないと 味蕾のターンオーバーが長くかかるようになったり、味蕾の形がおかしくなったりして、その結果、機能低下を起こすとされます。

味蕾の機能低下、ということはつまり、味がわかりにくくなるということです。

いろんな種類にのお薬をのんでいたり、全身性の疾患に伴って亜鉛の吸収しにくかったり、亜鉛がたくさん排泄されてしまうときも味覚低下が起こることがあります。

味蕾の萎縮は見てわかることもありますし、見た目は正常でも味覚の障害があるという場合もあります。だから、見た目は正常でも治療の意味がないわけではないんです。

 

 

亜鉛欠乏性感冒後加齢性薬剤性、内分泌性、全身疾患性、心因性、医原性、口腔疾患性、風味障害、嗅覚味覚同時障害、放射線性、遺伝性、末梢神経障害、中枢神経障害、特発性(理由がわからない)

 

実際に クリニックに診療していて多くみかけるのは はじめの4つの印象です。

 

加齢性変化がどれくらいあるのかということは、議論のあるところでまだよくわかっていませんが、65歳以上では質的味覚障害が65歳未満よりも多く、また口腔乾燥を訴える例も65歳以上が多いという報告があります。

 

他の感覚器と同様、加齢とともに味覚も弱くなると考えるほうが自然でしょう。

 

味覚障害の治療

 

1:亜鉛内服

亜鉛が不足すると、味蕾にある味細胞の細胞分裂のターンオーバーが遅くなることが確認されています。また味を感じる味蕾にある炭酸脱水素酵素の活性低下が報告されており、味覚神経の応答が低下すると考えられています。

 

特発性、亜鉛欠乏性、薬剤性、感冒後、全身疾患性などの場合、亜鉛内服療法を行います。

味覚障害の場合、原因がはっきりとわかることは稀で、いろんな要因が重なっていることも多いと考えられるので、除外すべき疾患を排除できたら、ひとまず亜鉛内服療法を行う、ということが多いです。

現在のところ、「味覚障害」に対して保険適応のある薬剤はないのですが、亜鉛を含有した抗胃潰瘍薬ポラプレジンク(商品名プロマック)は2011年に「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取り扱い」で保険審査上使用が認められています。

また、Wilson病の治療薬である酢酸亜鉛水和物製剤(商品名ノベルジン)は2017年に低亜鉛症に対して保険適応が追加されています。

亜鉛は、毒性が低く、貯蔵タンパクが存在しないため、通常の食事摂取ではまず過剰症を引き起こさないとされていますが、薬剤やサプリメントで補充する場合、亜鉛の過剰投与は血清鉄値、銅値を低下させてしまうことがあります。そのため定期的に採血して、ちょうどいい値にコントロールすることが望ましいです。

血清亜鉛の正常値は80~130μg/dl以上くらいです。血清亜鉛値が250μg/dlになれば減量します。

血中の亜鉛量は、体内亜鉛量のほんのわずかしか反映されず、0.1~0.5%であるとされます。

また日内変動や食事の影響をうけたすいために、血清亜鉛値は必ずしも全身の亜鉛の過不足を正確に反映していないとされています。

そういうわけで、採血で、血清亜鉛値が低いケースだけでなく、正常域にある場合の味覚障害でも、亜鉛剤の投与が有効なことがあると考えられています。

血清亜鉛の値は一日の中でも変動するので、経過を見るなら、なるべく同じ時間帯に測定するとよいでしょう。

亜鉛内服は、通常即効性がないとされ、3ヶ月から半年は継続します。

 

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1カプセルあたり亜鉛30mg

 

 

↓亜鉛アプリ 国内でもよく流通しているディアナチュラ 14mg/day 亜鉛含有量が高いです。

 

 

2:鉄剤: 鉄欠乏の場合

 

3: ビタミン剤:ビタミン欠乏の場合

 

4: 人工唾液:口腔乾燥症の場合

 

5: 抗不安薬・抗うつ薬:心因性・うつの場合

 

6: 漢方: 補中益気湯、人参養栄湯、平胃散、小柴胡湯など。

補中益気湯:味覚低下、食欲低下に。

 

 

八味地黄丸(異常味覚、加齢性味覚障害に)

 

 

自発性味覚障害の治療

「何も食べていないのに口の中が塩辛い、苦い」など。

舌痛症の治療に用いられるカプサイシンクリームが有効との報告あります。

自発性味覚障害には舌痛症に似た側面があり、効果が期待されています。

舌痛症の場合は、唐辛子の主成分であるカプサイシンはTRPV1(Transient Receptor Potential Vaniloid)受容体で受容され、痛覚の求心性線維であるC繊維に作用する。サブスタンスPを放出し、一過性に灼熱感と痛覚過敏をきたすが繰り返し刺激が与えられることで侵害受容器の不活性化、神経機能抑制がもたらされ、鎮痛作用が期待できると考えられています。

市販のものではカプサイシンクリームはありませんが、

嚥下のトレーニングに用いられるこのような カプサイシンのフィルム商品があります。

 

 

 

今日からできる 亜鉛欠乏対策の食事のコツ

栄養指導になります。亜鉛の一日摂取推奨量は 成人男性で10mg、女性で8mgです。

一方、実際の一日亜鉛摂取量は 男性8.9mg、女性7.3mgとなっていて、数値だけ見れば、日本人は亜鉛欠乏のリスクがあると言われています。

亜鉛は、十二指腸や空腸で吸収されるが、その吸収率は20~60%と幅があります。

亜鉛を多く含む食品をご紹介します。

牡蠣

レバー 豚、牛、鳥の順に亜鉛が多いです。

うなぎ、かに、ホタテ貝柱

なんか ちょっといい居酒屋さんのメニューみたいですね。

カシューナッツやアーモンドもいいです。亜鉛の吸収を阻害する食品というのもあります。

例えば食物繊維を多く含む食品 海藻類やきのこ類 玄米など食物繊維は大事なので減らす方向にしなくていいと思いますが、緑茶、コーヒー、紅茶は味覚障害のときには注意したほうがいいかもしれません。味覚のテストもあることはあるのですが、行える施設はごく限られています。

また時間がかかりすぎるため、耳鼻科のクリニックでは お口の中の診察と問診で治療を勧めているところが多いと思います。味覚障害がある場合には、「嗅覚障害」がないかどうか
つまり、においがちゃんとわかるのかどうかもチェックします。

どれくらい味がわかるのかって数値で示しにくいので自覚症状をはかる目安を決めておくと良いですね。味覚が正常な状態を10、全く味がしない状態を1として医師に伝えてもらえると、変化がわかりやすいかと思います。

 

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