このページでは 耳鼻科の診療でも見かけること多い
「流行性耳下腺炎」いわゆるおたふくかぜの原因や治療について解説します。
おたふくかぜ/流行性耳下腺炎とは
おたふくかぜっていうのは、ムンプスウイルス(RNAをもつパラミクソウイルス科)によって起こります。
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好発年齢は集団保育や、小学校にあがる3~8歳くらいと、行動範囲の広がる青年期です。
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このウイルスは、飛沫感染によって広がり、潜伏期間が2~3週間とされます。
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このムンプスウルイスは感染しても、全員が症状がでるわけではないんです。
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およそ70%の方が、症状が出ると考えられてます。
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年齢が低いほど、感染しても見た目ではわからないこともあります。
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こういう状態を 「不顕性感染」といいます。不顕性感染は1歳児では80%4歳児で10%くらいといわれています。
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つまり、赤ちゃんだとウイルスに感染してもわからないことが多いんだけど、4歳時だと、10人中9人と、ほとんど全員におたふくかぜの症状が出てくるということです。
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どんな症状がでるかというと、まず、食欲がなくなったり、筋肉痛や、全身倦怠感など、かぜのような症状がでます。
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この後、数日内に耳下腺炎が起こります。
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発熱はあることも、無いこともあります。皮膚の赤みはほとんど無いですが、耳下腺全体が痛みを伴って腫れることが多いです
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耳下腺の腫れは、片方だけのこともありますし、両側のこともあります。
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時間差で、数日遅れて反対側の耳下腺が腫れることもあります。
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耳下腺の腫れは だいたい発症から、10日から2週間程度で回復することが多いです。
流行性耳下腺炎の診断
患者との接触歴、既往歴、ワクチンの接種歴を参考にします。
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耳下腺が同時、あるいは5日以内に両側腫れてきて、ステノン管という上の奥歯の横辺りにある耳下腺管の開いている部に膿がでていない、というときには流行性耳下腺炎を強く疑います。
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採血では、ムンプスの抗体価や、アミラーゼの値が参考になります。
流行性耳下腺炎の治療
ムンプスウイルスが原因ですので、抗菌薬は効果がなく、(積極的に早く治すという意味では)特に有効なお薬はありません。
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そこで治療は安静と、症状をやわらげる対症療法をおこなうことになります。
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解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンを処方することが多いです。
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ウイルス暴露後のワクチン緊急接種は有効性が低いとされ、ガンマグロブリンの投与も無効で通常行いません。
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流行性耳下腺炎の合併症
耳下腺の炎症とは無関係におこってくることもあるんですが、無菌性髄膜炎や、脳炎、精巣炎、膵炎、心筋炎など、このような合併症があれば入院管理になることがあります。
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もうひとつ 注意しないといけないのがムンプスによる難聴です。
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小さいお子さんでは、聴力低下を訴えないこともありますが、聴力検査をするか、それができない小さいお子さんでは、スクリーニングでアブミ骨筋反射など行って調べておきます。
おたふくかぜって くり返すの?
「おたふくかぜって何回もなるものなんですか?」って よく質問されます。
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これについて解説します。
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おたふくかぜは、かつては一度感染すると「終生免疫」といって、二度とかからないもの、と信じられていたんですが、現在はこのことが否定され、再感染が起こるとされています。
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大事なので、繰り返します。
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おたふく風邪は、一回かかっても、またかかる可能性があります。
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ムンプスワクチンによる抗体獲得率は90~95%とされていて、ワクチンで大部分は防げるということになります。
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しかし、抗体持続陽性率は70~80%で、免疫力が落ちてしまう可能性があります。
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さらに、ワクチンを接種しても、抗体を獲得できない方もいます。
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つまり、ムンプスワクチンを打っていたら絶対に大丈夫、ではなくて、何度も流行性耳下腺炎に罹患する可能性がある、ということです。
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ムンプスウイルスに未感染、あるいは十分な抗体が無い児童では同じ教室での感染率は89.5%とされています。
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これが同一家族内では、97.4%であり、患者さんの自宅待機だけでなく、自宅内でもできるだけ隔離をして、家庭内での二次感染予防のために、マスク手洗い、タオル共用をさけるような対策をしたほうがよいということになります。
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さきほどもお話したように、何度も流行性耳下腺炎になっちゃう可能性があるからです。
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学校や職場のおやすみの期間について
労働安全衛生法・学校保健安全法では
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「腫脹の発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」と書かれています。
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日にちの経過や、耳下腺の腫れぐあいを見て、都合よく解釈しないで、この文言通りに耳下腺周囲だけじゃなくて 顎下腺あたりの腫れも引いて調子がすっかりよくなるまで 登校 出勤をひかえてもらいます。
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いかがだったでしょうか。
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おたふくかぜは、以前には 終生免疫を考えられていたので、以前にかかったことがあるのにおかしいなと、と心配される方もいらっしゃいます。
参考にしていただけたら嬉しいです。
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大阪 和泉市の耳鼻咽喉科
電話 0725-50-3333
耳鼻咽喉科専門医:中西 悠