このページでは耳のかゆみを生じる外耳道湿疹について解説します。
私が外来で診ている患者さんでも
かなりの数の方がいていらっしゃって
珍しくない疾患です。
外耳道湿疹とは
耳かきや綿棒で、繰り返し耳を触りすぎて生じる皮膚炎です。
イヤホンの使用や補聴器による 接触刺激もきっかけになることがあります。
触るから痒いのか、痒いから触るのか どっちが先かわかりませんが
この悪循環を断ち切るようにしないと、なかなか改善しません。
特にお風呂上がりなど、体温が上がったときに 痒みが増して
習慣的に 綿棒で耳を触っている という方に多いです。
思い当たる人 けっこう多いんじゃないでしょうか。
お風呂上がりに毎日 綿棒で お掃除するのが習慣になっているという方も多いんですが
触りすぎの傾向になるので、
外耳道湿疹がひどい方の場合には
綿棒は捨てちゃうか、
捨てられないなら、すぐに手に取れるようなところにおかず、
どこか奥のほうに しまっておいてくださいとお願いしています。
よく耳に水が入ったらどうしたらいいんですか?と聞かれますが
安心してください。ほっとけば乾きます。
耳の中に水が入っても 必ず取らなきゃいけないようなモノではないんです。
耳の穴の形状とか、耳垢の性質にもよるんですが
ほとんどの方は頻繁な耳掃除の必要はなくて、
2週間に1回以上の耳掃除は、やりすぎと思っていただいて良いと思います。
あまり触ると 健康な耳の皮膚にある自浄作用がそこなわれて
耳垢がたまりやすくなることがあります。
外耳道湿疹の症状
耳の痛みや、耳の中が濡れた感じ を生じて受診される方が多いです。
皮膚炎が高度だと、耳の穴の入り口の皮膚が ガッサガサに荒れた感じになってきます。
ひどくなると皮膚炎の範囲が拡大してきて、
それでもしつこく触っていると、カビがついて別の動画でも解説しているような
外耳道真菌症になったりもします。
診察所見では、外耳道の入り口部分の皮膚病変がメインで
ガサガサと荒れている、湿っているという状態が多いです。
外耳道湿疹の治療
とにかく触らないこと、です。
ひどい外耳道湿疹の場合に、
私がクリニックでも患者さんによくお願いするのは
「耳を触るのは 私にまかせてください」ということです。
耳を触るのは 私がクリニックで耳の処置をするときだけ、にします。
処置では 皮膚の炎症がある部分に
リンデロンVG軟膏のような ステロイドを含む軟膏を塗布してしっかり痒みを
コントロールします。
処置した日は 風呂も入って良いし、髪も洗って良いけど
耳の穴のところを なるべく洗わないように と指導しています。
一回処置するだけでも、軽い外耳道湿疹の場合には改善することがあります。
結構強めの病変でも あまり期間を空けずに 2、3回処置すれば
ほとんどよくなることが多いです。
かゆみを抑えるようなステロイドの点耳薬 目薬みたいなタイプのお薬もあるんですが、
ひたすらそれを使いつづけるようなことになりがちで、
真菌症にも繋がりかねないので
感染を伴うようなケースを除いて
個人的には滅多に処方していません。
耳の穴って
自分では見えないところですし、
真横に空いてるんじやなくて
ちょっと下向きと 後ろ側に 傾いていてるんです。
個人差もあるんですが、入り口から奥の方に向けて けっこうカーブしていることも多いんです。
そういうわけで
自分で処置しても 同じところばかり触ってしまって
かえって炎症を悪化させたり、耳垢を押しこんでしまいがちです。
中途半端に触って感染を伴ってきたりすると、
余計に治りが悪いので
なるべくご自身で軟膏をつけるような処置は控えてもらっています。
もう一度いいます。
自分で触って治そうとしない方が良いと思います。
自分でできることは?
そうはいっても、
忙しすぎて耳鼻科にいく暇もないという
方もいらっしゃると思います。
そんな方には
市販薬でも テラコートリルのような 比較的弱めのステロイドに抗生剤が含まれているものを
綿棒でごく少量塗布することは有効です。
あと、かゆみといえば、ム◯ ですね。
耳のかゆみに使えるものが市販されています。これも綿棒でつけるタイプです。
こういう市販薬でよくなる方は それでいいと思います。
ただ使っていても 改善しないということで
受診される方がけっこういらっしゃいますので、
やっぱり よくならないなら
どんな状態か改めて確認するので 耳鼻科へどうぞ ということになります。
ここまでは 耳に直接処置する方法でしたが
なるべく耳を触らないようにしましょう 、という原則に変わりはありません。
ただ 耳を触るのをやめてくだいね、といっても
すごく 痒くて患者さんも辛いです。
あるいは
寝ているときに知らずに触ってしまうということもあります。
そこで、
内服の痒み止めを処方します。
抗ヒスタミンをいわれるようなものですね。
どうしても病院に行く時間がない場合は
市販薬では アレグラやタリオンのような
アレルギー性鼻炎のお薬が
抗ヒスタミン薬ですので、かゆみを和らげる効果が期待できます。
外耳道湿疹は お耳の皮膚炎なので、
体質的な要素もあって、
一時期は良くなったのに
季節の変化なのか、他の影響があるのか
またしばらくすると悪化して受診されるということがあります。
こういう方の場合は、もう体調管理と思って、ときどき外来で診ていきましょうね
とおすすめして、なるべくセルフコントロールできるように
管理方法をご案内しています。
こうやって話していても、外耳道湿疹で
たまに外来に来られている患者さんの顔が
何人も思い浮かびます。
さあ いかがだったでしょうか。
耳のかゆみが続くと けっこうストレスになると思います。
お困りの方は、原因からしっかり治療する方法を ご一緒に考えますので
耳鼻科で チェックしてみる ことを おすすめいたします。