このページではいびき・睡眠時無呼吸に対する手術について解説します。
Sleep Surgeryとも呼ばれるこの類の手術は
病態や年齢に合わせて数多くの術式があります。
手術は、いびき、無呼吸に対して単独で行われる場合もありますが、鼻閉でCPAPが使えない場合に対するサポート手術と、CPAPが奏効しない場合に救済目的に手術が行われる場合もあります。
閉塞性睡眠時無呼吸に対して行われる外科治療を総称してSleep Surgeryと呼ぶこともあります。1)
主な術式
アデノイド切除術
口蓋扁桃摘出術
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
鼻中隔矯正術
下鼻甲介手術(粘膜切除、粘膜下骨切除、等)
顎矯正手術
鼻中隔弯曲症は鼻の形態異常としては最も一般的に見られるものである。程度の差はあれ、およそ成人までに約90%近くの頻度で鼻中隔弯曲症を認める。2)
鼻中隔弯曲に伴い、鼻閉(鼻づまり)や鼻漏(鼻水)、繰り返す鼻出血、副鼻腔炎、睡眠時無呼吸、いびき、顔面痛、頭痛などをきたすと、鼻中隔弯曲症として診療の対象になる。
巷には、サプリを飲むだけでいびきや、睡眠時無呼吸がよくなると謳う商品や、のどにレーザーをあたるだけで睡眠時無呼吸がよくなると宣伝されているやり方もあります。効果を否定するものではありませんが、機序が医学的に?なものや標準的な理解に至っていないものも多いです。まずは睡眠検査をしっかり行い、鼻腔や咽頭の形態をしっかり評価することをおすすめします。
鼻副鼻腔手術について
鼻閉があると、睡眠中に口を開きやすくなり、いびき、睡眠呼吸障害が悪化します。
また、鼻閉や、鼻副鼻腔疾患はCPAPや口腔内装置を継続するのが困難な理由になります。
CPAPは持続的に鼻腔に送気されるため、鼻内の感想を生じることがあります。
そのため、CPAPを使用しなければ問題とならなかったような軽度の鼻中隔湾曲症でもCPAP使用中に鼻閉を訴えることがあります。
そこで、睡眠呼吸障害に対して以下のような
鼻副鼻腔手術の適応が考えられています。
1)鼻副鼻腔手術単独でOSASを治療しようとする場合は、軟口蓋が高く、舌根部が広い症例
2)鼻閉(鼻づまり)によりCPAPが使えない症例
3)鼻閉(鼻づまり)に対する薬物療法に抵抗する症例
4)両側鼻閉が高度な症例(鼻腔通気度 0.35Pa/cm3/sec以上)
具体的には、鼻中隔湾曲症に対する鼻中隔矯正術、肥厚性鼻炎やアレルギー性鼻炎に対する下鼻甲介切除、粘膜下下鼻甲介骨切除術、後鼻神経切除術を行うことがあります。
鼻腔通気を悪化させる鼻茸を伴うような慢性副鼻腔炎を合併した症例では内視鏡下副鼻腔手術を行います。
鼻の手術についての報告例
49名の閉塞性睡眠時無呼吸患者に鼻閉改善手術を行い、AHIには有意な改善は認められなかったが、エプワース眠気尺度(ESS)には自覚的な眠気が有意に改善したとの報告があります。
ESSが改善した理由として睡眠効率やREM期の占める割合が有意に増加したことが挙げられている。3)
鼻手術297例によるメタ解析によれば、AHI改善度はAHI35.2/Hr から33.5/Hrへと減少させるのみにて、有意差は認められなかった。4)
ただし、鼻手術により口呼吸から鼻呼吸へ移行した群は大きくAHIが減少し、その割合は15%ほどと報告される。
変動性鼻閉(アレルギー性鼻炎や人工的鼻閉)の方が、固定型鼻閉(鼻中隔湾曲症、長年にわたる鼻ポリープなど)より鼻閉解除によりSDBが改善すると報告されており、これは口呼吸から鼻呼吸への切り替えの可否と深く関連していると考えられている。5)
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参考文献
1)Powell NB, Reily RW, Guilleminault C: Surgical management od sleep-disordered breathing. eds Kryger MH, Roth T, Dement WC, In Principles and Practice of Sleep Medicine. 4th ed, Elsevier Saunders, Philadelphia,2005;1081-1097.
2)大西俊郎、他:鼻中隔湾曲症の処置、内視鏡的副鼻腔手術、102-104頁、メジカルビュー社、東京、1998
3) Nakata S, Noda A, Yasuma F, et al: Effects of nasal surgery on sleep quality in obstructive sleep apnea syndrome with nasal obstruction. Am J Rhinol 22(1):59-63. 2008
4) Li HY, Wang PC, Chen YP, et al: Critical appraisal and meta-analysis of nasal surgery for obstructive sleep apnea. Am J Rhinol Allergy25: 45-49,2011
5) McNicholas WT: The nose and OSA: variable nasal obstruction may be more important in pathophysiology than fixed obstruction. Our Respire J 32: 3-8 2008