睡眠時無呼吸の治療
睡眠時無呼吸の原因は幾つかの閉塞部位が複合し関与している場合が少なくありません。したがってSASの治療は一つの治療法で改善する場合もありますが、病態に応じて幾つかの治療を組み合わせないと、効果が得られない場合があります。治療には以下のものがあります。
1.生活習慣改善、減量
2. 口腔内装置(oral appliance)
3. CPAP: 睡眠時無呼吸治療の中心
4.手術: Sleep Surgery
1.生活習慣改善、減量
減量
肥満に伴う上気道周囲、特に顎下部や舌根、軟口蓋、口蓋垂での過剰な脂肪沈着は、上気道を狭くする原因になると考えられます。胸壁や腹壁の脂肪沈着は、胸郭コンプライアンス(動きやすさ)及び機能的残気量を低下させます。
生活習慣への介入による減量のOSASに対する効果を検討したメタ解析では、減量幅に比例してAHIが軽症化しえることがわかっています。その一方で、10kg程度の減量に伴うAHIの変化は-5程度相当であり、中等度以上のOSAS症例においては、減量単独でAHIの正常化を得るのはなかなか困難であると考えられます。
飲酒
睡眠前のアルコール摂取は、上気道の虚脱をより生じやすくさせ、呼吸イベントの出現頻度持続時間を増加させ、酸素飽和度低下を悪化させることが知られています。
さらに、アルコール摂取により、鼻腔抵抗の増大がCPAP療法や口腔内装置治療の継続性を低下させることがあります。
アルコールは、接種後数時間してより睡眠を浅くする作用が出現し、深睡眠を減らし、中途覚醒を増やすなど睡眠の質的悪化を招くとされています。2)
禁酒困難な場合には、アルコール摂取量を適切量(純アルコール量20g程度まで)とした上で、眠前4~6時間までに切り上げるように指導する。
喫煙
喫煙者では、鼻腔抵抗が増大していることが知られており、同時に粘膜線毛クリアランスが障害されるため気道感染を罹患しやすくなります。これらはCPAP療法や口腔内装置治療における継続性を悪化させる可能性があり得るので、禁煙はすすめていくべきと考えられています。
塩分摂取
2. 口腔内装置(oral appliance:OA)
口腔内装置が有効なのは、SAS患者の上気道の形態に影響する解剖学的な構造異常が口腔内装置によって矯正されるためです。つまり、口腔内装置は下顎とともに舌を前方に牽引して固定し、後下方に押し出されていた舌を口腔内に納めて舌根部の気道を拡大します。この結果、軟口蓋部分及び舌根部の気道断面積が増大します。
参考:口腔内装置の効果予測
①頭部X線規格写真分析法(セファロメトリー)
小顎(下顎後退)があれば口腔内装置があるという考え方。実際には、セファロメトリーで小顎(下顎後退)あるいは上気道狭窄が明らかでも、下顎の前方移動が行えない患者、あるいは下顎を前方移動できても舌の牽引が図れない患者は気道の拡大が得られない。
②下顎前突テスト
ファイバースコープあるいはX線透視撮影下に下顎を前突させて咽頭腔の拡がりをみる動的な検査方法。同部の気道断面積が増大する症例は、口腔内装置の効果が期待できる。つまり、顎顔面形態だけでなく、上気道の動的形態の評価が重要とする考え方。
3. CPAP: 睡眠時無呼吸治療の中心 と 4.手術: Sleep Surgery
の詳細はそれぞれのページに記載します。
参考文献
1)Peppared PE, Young T, Palta M, at al: Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing . JAMA 284 (23) 3015-3021, 2000
2)睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会:睡眠障害の診断・治療ガイドライン 第2版, 内山真(編), じゃほう, 東京,2012