抗加齢医学会のテキスト
「アンチエイジング医学の基礎と臨床」を備忘録を兼ねてまとめてみました。
これから抗加齢医学会の専門医・指導士試験を受けられるような方には対策としてもご利用いただけるかもしれません。
アンチエイジング医学は、発展途上の分野であり、現時点でのテキスト中でも「明らかであること」と「よくわかっていない」ことが混在しています。
どこが記憶しておくべきことなのか、がわかるとよいなと思い、私なりまとめを作成してみました。現在までに「これは確かであろう」とわかっていることを中心に記載しています。
注目すべきポイントがずれているかもしれませんが、そこはご勘弁を。
機会をみて、随時アップデートしていきたいと思います。
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Ⅰ.1 アンチエイジング医学とは
加齢という生物学的プロセスに介入を行い、加齢に伴う動脈硬化や、癌のような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿を目指す医学である。
現時点の医学レベルでのアンチエイジング的なアプローチは理論的に可能であり、その実践が始まりつつある状態
現時点での仮説: カロリーリストリクションCR仮説と酸化ストレス仮説
マウスでは70%程度にカロリー摂取をへらすと寿命が長くなる。
CRによって、サーチュインという酵素が活性化して、抗酸化酵素の発現増強やアポトーシスの抑制など長寿にかかわるシステムを増強する
CRのほかに、運動や、レスベラストール(ポリフェノールの一種 赤ワインに含まれる)などでもサーチュインを活性化できる。
サーチュイン活性化に必要なの補酵素:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
食べ物がたくさんある状態では、インスリン様成長因子IGFが活性化し、エイジングが促進する。
メタボリックシンドロームは加齢を促進するプロセス
酸化ストレス仮説:ミトコンドリアで産生される酸化ストレスが加齢を促進する。
Ⅰ.2 エイジング(加齢)のサイエンス
最近研究の進んでいる領域
1 脳 特に視床下部のエイジング、寿命制御における重要性
2 さまざまな液性因子の機能とその変化
3 サーカディアンリズムをはじめとする生物学的なリズムの制御
4 慢性炎症の重要性
5 腸内細菌の与える影響
Ⅰ.3 アンチエイジング(抗加齢)医学の哲学
物理学的な加齢と 生物学的な加齢
生物学的な加齢の進行は、きわめて不均一に進むことが特徴的である。したがって老化現象の蓄積の程度は個人によって、また臓器によって著しい不均一性が認められる。
長寿の質が重要
単に寿命を延長するのを目指すのではなく、元気で長寿を享受することを目指す
「元気」とは 一般に理解されている「健康=何も病気をもっていない状態」とは違う。なんらかの病気をもっていてもよい。人生の目標を持ち、生きがいを感じつつ日常の生活を送ることが元気を生む。
Ⅰ.4 アンチエイジング(抗加齢)医学の世界的流れ
1948 WHO
Health is a state of complete physical, mental and social well-being, and not merely the absence of disease or infirmity.
健康には積極的な健康と消極的な健康がある。病気がない、障害がないのは当然であり、これは消極的健康に該当する。積極的健康は精神的にも肉体的にも社会的にもwell-beingな状態であると謳われている。
Ⅰ.5 加齢の疫学とアンチエイジング
老化にはDNAプログラムにそって進行する生理的老化と、外部環境からの各種の侵襲(ストレス)によって発生した炎症や腫瘍による病的老化がある。
医療疫学
地域ごとの罹患率、死亡率やリスクの保有率を比較したりする横断研究と、
特定の集団を選んで経年的に追跡する縦断研究とがある。縦断研究のほうが社会医療や臨床医学にとってより有用である。
平成14年からプライバシーを尊重する必要性から、疫学的手法を用いた研究などの適正推進のあり方に関する専門委員会が設けられ、文科省や厚労省による倫理指針にそったものでないといけない。
Ⅱ.1 アンチエイジング医学の疫学研究
日本人の生活習慣病は、高血圧の影響が強く、脳卒中が多い一方で、肥満、脂質異常の影響は比較的少なく、虚血性心疾患が少ないことが特徴である。
Ⅱ.2超高齢化社会におけるアンチエイジング医学の意義
脳血管障害、高血圧、脂質異常、虚血性心疾患などの代謝性疾患には 食事療法や運動療法で介入が可能であり、その予防効果が期待できる。
今後は、がん予防や認知症予防について科学的根拠蓄積が期待される。
Ⅱ.3アンチエイジング医学の政策的推進
政府の日本再興戦略改訂版 の数値目標
2020年までに国民の健康寿命を1歳以上延伸す
2020年までにメタボ人口を2008年比25%減
Ⅱ.4 健康増進とアンチエイジング医学
アンチエイジングの目的は、疾病発生の前段階と考えられる病的老化を予防し、理想的な生活習慣などによって適切な状態に保ち、疾病の発症及び死にいたるリスクを減免することにある。
Ⅱ.5 アンチエイジング診療をはじめよう
がん予防を積極的に展開するとアンチエイジング医療に到達する。
アンチエイジング指導
1 40歳以上では 仕事も遊びもアルコールも腹八分目と心得よ
2 たばこは絶対だめ
3 糖質をへらそう 美食から粗食へ
4 筋肉を増やそう 毎日汗をかく40分のウォーキングを
5 1日7時間のぐっすり睡眠
6 いつも前向き笑い顔
Ⅱ.6 産業医とアンチエイジング医学
産業医の使命
1 仕事による有害な健康影響の発生や増悪を予防すること(職業性疾病の予防)
2 疾病や障害を有するものであっても就業できるようにすること(就業適正の確保)
Ⅱ.7 再生医療 基礎研究から臨床へ
損傷を受けた生体機能を肝細胞などを用いて復元させる医療
多能性幹細胞
ES細胞 初期胚の内部細胞塊(将来胎児の身体を形成する部分)に由来する胚性幹細胞(embryonic stem cell ES細胞) と 体細胞に初期化遺伝子を導入して誘導して樹立した人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS細胞)の2つに大別される。
Ⅱ.8アンチエイジング(抗加齢)医学の未来
加齢メカニズムには、エピジェネティクス、遺伝子の損傷、テロメアの短縮、タンパク質のクロスリンキング等さまざまなものがからんでいるが、CR仮説と酸化ストレス仮説が大きな位置をしめているのは、これらの理論に基づいて実際の介入が可能であるから。
ホルミシス仮説:生体にとって致死的ではないストレスが加わった場合、次のストレスへの応答性が改善すること。 運動によって活性酸素が発生することは知られているが、加齢を促進するはずの活性酸素なのに、運動が身体に良い理由は、運動によって生じた活性酸素によって、活性酸素を除去する酵素群が誘導されるからと考えられる。また運動によってミトコンドリア機能があがり、CRと同様な効果も得られるようになる。一時のストレスがトータルとしてよい結果を生む。
アンチエイジング介入の7つの方法 現時点でかなり厳しい基準で認められているもの
1 CR
2 断食
3 運動
4 レスベラトロール
5 ラパマイシン
6 スペルミジン
7 メトフォルミン
CRをしなくても、同じような効果を得たいという研究:CRミメディックス
サーチュインは NAD nicotinamide adenine dinucleotide (NAD)依存性の酵素であるため、NAD濃度を高める方法が提唱されている。
前駆物質を与えるもの:nicotinamide mononucleosis(NMN)
やnicotinamide ribosome(NR)
NADを競合的に使う poly ADP-ribose polymerase(PARP)酵素の阻害剤に使用
サーチュインの一部はがん細胞の老化も抑えたり、抗酸化サプリメントにしても過剰摂取は必要な酸化ストレス(細胞間伝達に必要)もなくしてしまう可能性がある。各個人に必要量を決めることが重要に。
Ⅲ.A1 ゲノムの理解
1つの遺伝子変異が主となって起こる単一因子疾患と
複数の遺伝子と環境因子が加わって発症する多因子疾患がある。患者数は多因子疾患が圧倒的に多い。
単一遺伝子疾患関連遺伝子変異;劣勢遺伝病のキャリアであるかどうかは、結婚前にパートナー同士が劣性遺伝子同士の組み合わせを共通にもっていないかをチェックするような遺伝子検査サービスが欧米では行われている。
慢性的日常疾患は多因子疾患。多くの遺伝子と環境因子によって発症リスクが決まる。
これらの遺伝子変異はゲノムワイド相関解析(Genome Wide Association Study;GWAS)という手法によって発見されてきている。
2型DMでは発症に関与する遺伝子・遺伝子多型は80個以上見つかっている。ひとつひとつの影響は小さいが、効果があわさることで発症リスクが臨床的に意義があるとされる2倍を超えることがある。
Ⅲ.A2細胞老化と老化関連疾患
テロメアは、染色体の両端に存在し、染色体の保護や複製における基質の役割を担うが、細胞分裂にしたがって極度に短縮するとDNA損傷とみなされ、p53依存性の老化シグナルが活性化し細胞増殖が停止する。
動脈硬化は、高血圧、虚血性心疾患、脳卒中などの多くの老化関連疾患の原因になる。
肥満した老化モデルマウスでは、糖尿病が引き起こされるとともに脂肪組織の老化が惹起されている。
慢性心不全時に生じる脂肪炎症により全身のインスリン抵抗性が生じる。
Ⅲ.A3 エピジェネティックスとアンチエイジング医学
エピジェネティックスとは、DNA塩基配列の変化を伴わずに、遺伝子発現を制御するDNAやヒストンに対する化学就職のこと
通常、細胞分裂後も継承される変化である
DNAの塩基配列情報の総称をゲノムと呼ぶのに対し、そのゲノムを修飾するエピジェネティクス情報の総称をエピゲノムと呼ぶ。異なる生活環境や生活習慣のもとで加齢していくことで、エピゲノム情報が蓄積し、疾患の発症や寿命に影響を与えていることが考えられる。
エピゲノム変化は遺伝子発現のオンオフを制御するスイッチのような役割を果たしている
エピゲノム変化は、DNAメチル化阻害薬、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、ヒストンメチル化酵素阻害薬などの薬剤により基本的に可逆的である。
Ⅲ.A4 老化遺伝子
遺伝性早老症
Werner ウェルナー症候群
Hutchinson-Gilford syn
Rothmund-Thomson syn
Ⅲ.A5 カロリー制限
CRで血中GH、IGF-1低下する→CRの寿命延長効果にIGF-1系が役割を果たすと仮定される
CRの寿命延長は白色脂肪に関連するエネルギー代謝制御が関連していると考えられている。
いずれもまだ動物実験レベル
Ⅲ.A6 インスリン IGFシグナルと老化・寿命制御
血中のIGF-1は主として肝臓において産生され、その分泌は下垂体後葉由来の成長ホルモンによって正に調節されている。
Ⅲ.A7 DAF-16/FOXOの寿命制御における役割
DAF-16 線虫研究で見つかった転写因子 長寿遺伝子とされる
Ⅲ.A8 サーチュインと老化 老化関連疾患
NAD依存性に基質タンパク質の脱アセチル化/脱アシル化を行う酵素群に与えられた総称
老化と寿命の制御に重要な役割
Ⅲ.A9 オートファジーと老化 寿命
真核細胞内の代表的な大規模分解システム
ユビキチン・プロテアソーム系
分解すべきタンパク質を厳密に識別する選択的タンパク質分解系
オートファジー系
タンパク質だけでなく、ミトコンドリアなどのオルガネラも分解できる大規模なシステム
オートファジーは常に低レベルで起こっており、組織の工場正維持に重要
栄養飢餓でオートファジーが顕著に誘導される。栄養と細胞の健康を結ぶものと考えられる
細胞内浄化機構として重要
脳のオートファジー活性は栄養の影響を受けない。
Ⅲ.A10 老化におけるmTOR経路
mTOR(mammalian / mechanistic Target of Rapamycin)は免疫抑制薬 ラパマイシンの標的タンパクとして発見された約290kDaからなる巨大なタンパクリン酸酵素
ラパマイシンやそのアナログは免疫抑制薬だけでなく、抗がん剤や薬剤溶出ステント再狭窄予防コーティング剤として臨床応用されている
Ⅲ.A11 a-Klotho・FGF23システムによるカルシウム リンの制御
a-Klotho 多彩な老化症状を呈する変異マウスの原因遺伝子として同定
カルシウム恒常性を制御する
カルシウムホメオスタシス制御は時間軸に沿って3つのステップに分けられる。全体として血液、体液、髄液中のカルシウム濃度は極めて狭いレンジに維持される
Ⅲ.A12 テロメア Gテール テロメラーゼ
染色体に格納されているゲノムDNAは、直鎖状二本鎖DNAであることからすべての染色体DNAには末端がある。この末端DNA部分はテロメアDNAとよばれ5’-TTAGGG-3’の繰り返し配列からなり、染色体同士の末端融合から保護する役割がある
通常の体細胞では、10〜20k塩基対のテロメアDNAの長さがあるが、細胞分裂の回数に依存してテロメアが短縮し、その長さが5000塩基対程度まで短縮すると細胞分裂が停止することから、細胞分裂をカウントする回数券によく例えられる。
染色体末端のテロメアDNAはそのほとんどは二本鎖DNAであるが、最末端部分はグアニンに飛んだ5’-TTAGGG-3’配列の一本鎖テロメアDNAが突出した構造である。この一本鎖テロメアDNAは300塩基対程度のきわめて短いものであり、グアニン配列に富んだ配列がしっぽのような構造であることからテロメアGテールと呼ばれる。テロメアGテールの長さは染色体の安定性に関わる。
テロメアが短いと、若年性心筋梗塞や慢性心不全、がん患者の予後の悪さなどに関連
Ⅲ.A13 概日リズムと老化
一日周期の生体リズム(概日リズム)を制御する体内の自己発振システムを概日時計という。
行動を支配する概日時計は脳の視床下部の視交叉上核に存在して中枢時計とよばれ、外界の光周期に同調する。一方、全身に存在する抹消時計は食事に強く影響される。
食事の種類や量をへらすことなく、食事時間を制限するだけで肥満や関連する病態を防ぐことができ「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重要である。
全身に存在する末梢時計は食事に強く影響される一方、視交叉上核の時計は外界の光周期に同調する。
Ⅲ.A14 百寿者および超百寿者研究の展望
105歳 超百寿者 semisupercentenarian SSC
110歳以上 supercentenarian SC
最長寿の記録 女性 フランス人 122歳
男性 日本人 116歳
東京の百寿者の研究
1 97%の百寿者がなんらかの慢性疾患の既往があるか現在も罹患している
2 認知症がなく自立している百寿者は 全百寿者の20%
3 動脈硬化が少ない
4 糖尿病合併率が低い
5 炎症反応が亢進している
6 アディポネクチンが高い
7 幸せ感が高い
8 独特の性格 開放性が高い
Ⅲ.B1 細胞医学の理解 細胞老化とアンチエイジング
ヒトの細胞は50〜80回の分裂の後、不可逆的に分裂を停止し、この分裂限界点はHayflick限界点として知られている。不可逆的に分裂を停止し、増加できなくなった状態を細胞老化という。
p53 もともとがん細胞において変異 欠失などが知られており、DNA損傷やがん遺伝子発現などによって活性化され、異常な細胞の増殖を阻止する、癌抑制遺伝子として知られていたが、テロメア短縮による老化シグナルを担う分子であることも明らかとなってきた。
Ⅲ.B2 ステムセルエイジングからみたアンチエンジング医学
不老と考えられてきた幹細胞にも寿命があり、造血や皮膚、腸管などの幹細胞あるいは幹細胞ニッチの加齢変化(ステムセルエイジング)が、機能細胞の供給異常や分化の偏りをもたらし、臓器の機能低下や加齢関連疾患の発症へとつながることが明らかになりつつある。
Ⅲ.B3 液性因子による老化制御
細胞レベルでの老化に関する因子は数多く同定されているが、個体レベルでの老化を考えたときどのような液性因子が重要であるかはまだ解明されていない。
Ⅲ.B4 老化と細胞死
アポトーシス 多くの場合ミトコンドリアがアポトーシスシグナルの集約される場となる。
個体発生や 生体の恒常性維持に貢献
BH3-onlyタンパク質などの働きでミトコンドリア膜の透過性が亢進すると、チトクロームCなどのapoptogenicなタンパク質が細胞質に漏出する。チトクロームCはApaf−1を介してカスペースを活性化する。 Bcl-2ファミリータンパク質はミトコンドリアの膜透過性を調節することにより細胞死のオンオフを決定している。
非アポトーシス細胞死
ネクロプトーシス 計画的ネクローシス。 オルガネラの腫大、早期におこる生体膜の破綻などネクローシスの特徴を有する。臓器虚血障害、急性膵炎やウイルス感染による細胞死に関与している。
Mixed Lineage kinase domain-like protein MLKLなどのキナーゼの活性化により能動的に誘導される。
アポトーシスのバックアップ。
オートファジー
Ⅲ.C1 酸化ストレスの理解
酸化ストレス: 生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ、前者に傾き、生体にとって好ましくない状態。
活性酸素とは 酸素が一電子ずつ還元された
スーパーオキシド O2・ー
過酸化水素 H2O2
ヒドロキシラジカル HO・
と励起された酸素である 一重項酸素 1O2を意味する。
さらに広義の活性酸素として
好中球のミエロペルオキシダーゼにより、過酸化水素と塩素イオンから生成する次亜塩素酸 HOCl
炎症時に多量生成する一酸化窒素 ・NO
スーパーオキシドが反応して生成するペルオキシナイトライト ONOO-
最も酸化されやすい脂質 LHの酸化過程で生成する 脂質ヒドロペルオキシド LOOH
脂質ペルオキシラジカル LOO・
脂質アルコキシルラジカル LO・
ラジカルとは不対電子をもつ元素あるいは分子であり X・と表記される。基本的にラジカルは他から水素を奪って安定化したい性質を持つので反応性が高い。
酸素は一分子中に2個の不対電子を持つのでビラジカルとよばれ ・OO・と表記される。
酸化ストレスが亢進している状態
1 虚血・再灌流や炎症により活性酸素・フルーラジカルの生成が増加した場合
2 抗酸化酸素、抗酸化物質、修復酵素などによる防御がなんらかの原因で不調となった場合
Ⅲ.C2 ミトコンドリアのエイジング 老化
ミトコンドリアはエネルギー源であるATPの合成を司る細胞内小器官オルガネラである
ミトコンドリアではエネルギー代謝に伴い、活性酸素種が発生する
活性酸素種の過酸化水素H2O2は、低濃度では生体内シグナルとして機能し、むしろ老化を抑制することがわかってきている。
Ⅲ.C3 抗酸化によるアンチエイジング医学
細胞内のH2O2は酸化ストレスの重要なキーメディエーターであり、酸化ストレスの軽減のためには、
1 生体内の遷移金属 特に鉄の制御
2 細胞膜脂質過酸化抑制におけるビタミンEの意義
3 H2O2産生系であるミトコンドリア機能維持
4 H2O2消去系の活性化
非アルコール性脂肪肝
1 simple steatosis 単純性脂肪肝 経過良好
2 non- alcoholic steatohepatitis NASH:非アルコール性脂肪肝炎 肝硬変、肝癌へ進展の可能性あり
NASHへの進展、NASH由来の癌発生に酸化ストレス、特に肝臓内過剰鉄沈着による酸化ストレスが関与する。
NASHは組織検査しないとAST・ALTだけではわからない。
食材の中には鉄が多く、鉄制限食は長期には難しい 瀉血治療
ビタミンEの抗酸化ストレス抑制効果については NASHについては改善効果が認められている。
VE300mg/日 投与 2年間で 41.2%に肝線維化の改善傾向
インスリン抵抗性の改善、ALTの有意な低下あり。
他には成人に対する VE投与は否定的なデータも多い。
Ⅲ.D1 免疫の理解
獲得免疫系:T細胞や抗体を産生するB細胞により得られた多様な抗原受容体を介して微細な自己非自己の違いを認識する
自然免疫系 マクロファージや樹状細胞により担われ、病原体に特徴的な分子パターンを遺伝子再構成を必要としないパターン認識受容体を用いて認識する。
Ⅲ.D2 加齢に伴う免疫のエイジング
免疫系は老化にしたがってより原始的な細胞にシフトする。すなわち老化に伴い、マクロファージ、好中球といった下等動物のもつ自然免疫系細胞の割合が増加し、T細胞、B細胞といった高等動物で発達した獲得免疫系の割合が低下する。
高齢者は免疫能、特にT細胞の免疫老化により新しい感染症、変異しやすい微生物の感染に弱くなっていたり、ワクチンで十分な免疫を誘起できないといったことに加えて、疾病そのものや、治療のために使用する抗がん剤、免疫抑制剤でも免疫能が低下する。
Ⅲ.D3 慢性炎症とエイジング(老化)
肥満に伴い内臓脂肪組織に引き起こされる慢性炎症が生活習慣病の病態を惹起、促進すると考えられている。
生活習慣病における慢性炎症では、明らかな急性炎症の特徴(炎症の4徴:発熱、発赤、疼痛、腫脹)を伴わない低レベルの炎症反応が年余にわたって持続、遷延化する。
Ⅲ.D4 免疫 (ワクチン) を標的としたアンチエイジング医学
ワクチンとは 自然免疫および獲得免疫を活性化することにより、われわれが所持する免疫機能を利用して標的分子から生体を防御する治療法である。
アンジオテンシンⅡに対する高血圧のワクチンなども開発中
Ⅲ.E1
エネルギー代謝の理解 糖質 脂質 タンパク質
絶食24時間後には 血中にグルコースを供給するための肝臓グリコーゲンはほぼ使用されて貯蔵が枯渇する。
グリコーゲンが枯渇すると、筋肉のタンパク質分解がコルチゾールの働きで促進される。分解されたアミノ酸の多くはアラニンやグルタミンに変換されて血中に放出され、肝臓に運ばれてピルビン酸になり、糖新生の材料として使用される。1gのグルコースを生産するためには、約2gの筋肉タンパク質を分解する必要がある。
グリコーゲンが枯渇した飢餓状態では、脂肪細胞が遊離脂肪酸を多量に放出し、肝臓に流入して大量のアセチルCoAが産生される。クエン酸回路での処理能を超えた余剰のアセチルCoAはアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸に変換され、肝臓から血中に放出される。飢餓状態が続くと、脳は必要エネルギーの半分強をケトン体から得られるように適応し、グルコース需要を軽減する。
Ⅲ.E2 エネルギーバランスとアンチエイジング医学
身体が必要とするエネルギー源になるのは、炭水化物、脂肪であり、それが不足する場合はタンパク質も使われる。
極端な炭水化物排除は、長期の安全性や普遍性、継続性に関して危険性のほうが高いと思われる。
低糖食はエネルギーをまかなうために、必然的に脂肪やタンパク質の摂取がふえる。
タンパク質の多い食事は全身の代謝を亢進し、炎症性ストレスも起こしていることが示唆される。
長期のコホート研究では、低炭水化物、高タンパク食にがんや心疾患のリスクが有ることが示されている。
タンパク質は体重あたり 0.8gを基本とする。
肉よりも植物性蛋白質のほうが健康によいという報告が多い。
食事摂取基準2015
エネルギー産生栄養素バランス
タンパク質 13〜20
脂質 総脂質 20〜30
飽和脂肪酸 7以下
炭水化物 50〜65
Ⅲ.E3 抗糖化とアンチエイジング医学
糖化とは、アミノ酸やタンパクのアミノ基に、カルボニル基(C=O)を介して還元糖が非酵素的に結合する反応を表す。メイラード反応、グリケーションともいう。
アミノ基と還元糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、HbA1cに代表されるアマドリ転位物を経て、AGEs(advanced glycation end products: AGEs)が生成される。
AGEsの解析から、生活習慣病などの加齢関連疾患で 生体タンパクがいかに変性を受けているか、またAGEsを定量することによって 生体内の代謝異常を評価することが可能となる。
Ⅲ.E4 リン代謝とアンチエイジング医学
リンを摂取すると骨細胞から線維芽細胞増殖因子23 FGF23 リン利尿ホルモンが分泌される。
尿細管でのリンの再吸収を抑制して尿中リン排泄量を増やすことでリン恒常性を維持する。
生体は、水に溶けないリン酸カルシウムはfetyin -Aタンパクに吸着させてコロイド粒子(CPP)にして血中に分散させている。CPPは血中レベルが増えすぎると、本来の最終貯蔵先である骨ではなく、血管に貯蔵されると血管石灰化をおこし、さらにさまざまな臓器に作用してphosphatopathyと総称される老人類似の多彩な病態を引き起こす。
Ⅲ.F1 視床下部-下垂体ホルモン
GH-IGF系の低下は ひとでは寿命の短縮をきたす
加齢によりGHの分泌は低下する。成人GH分泌不全症に似ており、これはGH投与で改善するが
一般健常人に対するGH補充療法の効果は限定的であり、アンチエイジング目的での使用は推奨されていない。
Ⅲ.F2 甲状腺ホルモン
TSHの基準は年齢ともに高値になる。
抗サイログロブリン抗体と抗ミクロゾーム抗体の陽性頻度は加齢とともに増加し、特に60歳以上の女性において顕著である。甲状腺の自己免疫異常は甲状腺機能低下症を起こす頻度が高い
ただし、顕在性甲状腺機能低下症であっても、70歳以上の場合は、TSH濃度が7.5μU/nL以下で甲状腺抗体が陰性であれば年齢相応の正常値で抗甲状腺抗体が陰性であれば年齢相応の正常値であって甲状腺疾患ではないと判断すべきで、甲状腺ホルモンを投与するべきではないとされている。
Ⅲ.F3 副腎ホルモン
球状層 アルドステロン
束状層 コルチゾール
網状層 副腎アンドロゲンのDHEA、DHEA-S dehydroepiandrosterone
DHEAは エストロゲンやテストステロンの前駆体ステロイドであり、作用機序の一つとしてこれら性ステロイドへの転換を介した作用がある。
コルチゾール アルドステロンは生命維持に欠かせないホルモンであり加齢に伴う変動をほとんど認めないがDHEAは加齢に伴う特異的低下を認める。
Ⅲ.F4 肥満とアディポカイン
脂肪組織は飢餓にそなえて中性脂肪を貯蔵する臓器である。一方でアディポカインと総称されるさまざまな生理活性物質を産生、分泌する内分泌臓器である。
脂肪組織の状態を示す指標。食事療法や運動、薬物療法によってアディポカイン発現異常を是正すると、肥満状態は改善する。
代表的なアディポカイン
TNFα 炎症惹起作用のある IL6n発現を誘導する
レプチン 脂肪細胞から分泌され 視床下部の摂食中枢に作用して食欲を抑制する
肥満状態では レプチン抵抗性ができるため代謝異常が生じる
PAI-1 プラスミノゲンアクチベーターを阻害することでプラスミン生成を抑制 血栓形成傾向に。
Ⅲ.F5 アディポネクチン
脂肪細胞に特異的に発現して分泌される生理活性物質
脂肪酸の燃焼を促進することにより、インスリン抵抗性の原因となる組織内中性脂肪含量を低下させることが、その作用機序の一つとされる
肥満に伴うアディポネクチンの作用の低下が、インスリン抵抗性やメタボリックシンドローム、DM,心疾患、がんなどの肥満えリスクの高まる生活習慣病の主要な原因、分子機序となっている。
Ⅲ.F6 内分泌臓器としての血管内皮細胞
NO 血管内皮細胞自体から産生 分泌される。
NOは動脈硬化に重要な役割
酸化ストレス状態はNOの産生低下とNOの不活性化により血管内皮細胞障害に働き、血管内皮機能障害はフィードバックして動脈硬化を進展させる悪循環になる。
Ⅲ.F7 メラトニン
メラトニンは トリプトファンからセロトニンを経て合成されるホルモン 松果体から分泌
昼間に低く、夜高い日周変動を示す。
夜間に分泌されるメラトニンは加齢とともに減少する
若い人でも 夜間の光暴露が多いとメラトニン濃度が低くなる
とくにブルーライト
メラトニンは血液脳関門を容易に通過できるため経口投与でも有効である。
加齢によりメラトニンの分泌量が減少するため、昼夜のメラトニンレベルに差がなくなる。
→メラトニンが有効な不眠
Ⅲ.F8 ストレスとホルモン
主なストレスホルモン 3つ
コルチゾール 現代社会では、ストレスによる視床下部ー下垂体ー副腎系の活性化が、糖新生過剰(耐糖能異常、DM)、脂肪合成過剰(肥満)、塩分過剰(高血圧)などによる生活習慣病の促進因子となる。
慢性的なコルチゾール過剰は、筋組織の異化による骨格筋萎縮や骨組織の異化による骨粗鬆症も生じやすい。したがってコルチゾール自体に抗加齢効果はなく、むしろ予後やQOLを悪化させる。
カテコラミン
急性ストレス時に副腎髄質のクロマフィン細胞や交感神経細胞から分泌され、全身の細胞膜受容体に作用して 闘争か逃走かの反応を担う。血中半減期が短いため、持続的な高値は腫瘍性分泌で認められる。
成長ホルモン
IGF-1を介して骨伸長およびタンパク同化作用により成長促進作用
飢餓時の血糖維持などを担う代謝性サイトカイン
GHの過剰や欠乏は、同時にIGF-1の増減を伴うため、代謝や加齢への影響は複雑である。
Ⅲ.F9 加齢とインスリン分泌
加齢に伴い 耐糖能は低下 2型DM増える
耐糖能低下の原因として 内臓脂肪の増大、筋肉量の減少、身体活動の低下などによる
インスリン抵抗性の増大とインスリン分泌能の低下が挙げられる
Ⅲ.F10 男性ホルモン
テストステロン 第二次性徴に発現に必須 性衝動を促し精子形成に関与 成人においては テストステロンは筋肉の量と強度を保つのに必要であり、また内臓脂肪を減らし、造血作用を持ち、また性欲を起こす。テストステロンは集中力や、リスクをとる判断をすることなどの高次精神機能にも関係する。テストステロン感受性が低いとインスリン感受性が悪く、メタボリックシンドロームになりやすい。
テストステロン値の低下は死亡率と関係する。
Ⅲ.F11 女性ホルモン
女性ホルモンの低下は男性ホルモンの低下に比べて急峻である。そのため女性の老化における女性ホルモン低下の影響は男性の老化における男性ホルモン低下の影響よりも大きい。
エストロゲンの生合成は主に卵巣で行われるが、妊娠中は胎盤で、また閉経後女性や男性では卵巣からエストロゲンが産生されないため、末梢組織がエストロゲンの主な産生部位となる。
生殖器を中心に女性機能の発達、成熟に深く関わると共に、各組織でのアロマターゼ(p-450arom)の組織特異的な発現により、脂質、糖代謝、骨、肝、脳、血管の各機能に対する生殖器以外の作用を有する。
血中エストロゲンおよびプロゲステロンが減少すると視床下部からGnRHの分泌が増加し、下垂体からのFSH分泌が亢進する。このとき、血中インヒビンの減少がFSH分泌亢進をさらに促す。これによってエストロゲンやプロゲステロンの産生が誘導される。
Ⅲ.G1 認知機能の加齢による変化
加齢に伴う認知機能の変化はアミロイド(老人斑)やタウ(神経原線維変化)への加齢による変化に加え、加齢によって増加する生活習慣病によって修飾されると考えられる。
Ⅲ.G2 記憶の加齢変化とアンチエイジング
陳述記憶 体験した出来事の記憶 エピソード記憶 や言葉の意味、一般常識など(意味記憶)で言葉で表すことができる。
非陳述記憶は自転車の乗り方など身体が覚える記憶(手続き記憶)で言葉に表すことができない。
運動 特に有酸素運動とレジャー活動は高齢者の記憶機能を改善し、酸素摂取量と海馬萎縮は反比例することがしめされている。
Ⅲ.G3 認知機能のアンチエイジング 運動
運動は、筋や骨、心臓や血管など末梢器官の加齢による構造的、機能的退行に対してアンチエイジング効果をもたらす。
加齢にともなう脳萎縮は、大脳皮質(特に前頭前野)と海馬で顕著に認められるが、運動はこれらの脳部位の萎縮を食い止める。
運動は特定の脳領域の萎縮を抑制するだけではなく、脳内のネットワークを正常に保ち、代償的な脳活動を誘発することで認知予備力を高める効果がある。
IGF-1は運動により中枢に作用する。有酸素運動は認知機能を高める可能性。
有酸素能力の向上を目標とした場合、最大酸素摂取量の50〜60%程度の中強度での運動を一回30分以上行うことが望ましいとされる。
10分間の低強度運動でも覚醒度の増加に伴い前頭前野の活動を増加させ、実行機能を向上させることがわかっている。
Ⅲ.G4認知機能のアンチエイジング 栄養
抗酸化物:
野菜、果物、緑茶、コーヒー、ワイン カレーのクルクミン:ターメリックの黄色色素
VB群 ホモシステイン合成の補助因子として作用する VB6,VB12、葉酸の欠乏は認知機能の低下、ADを引き起こす。
VD
DHA:認知機能への有用性
ココナッツオイルなどに含まれる中鎖脂肪酸の摂取が、記憶力低下を抑制するとの報告あり。
Mediterranean diet 地中海食:心血管疾患予防のエビデンス、ADや認知機能にも良さそう。
オレンジやりんごなどのジュース、トマトやブロッコリーなどの野菜、えんどう豆などの豆類、パンや米などの穀類、オリーブオイル、魚が多く肉が少ない、適量のワイン
DASH食;Dietary Approaches to Stop Hypertension
塩分排出作用のあるミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)をしっかりとって高血圧を改善する食事法;認知機能にも良いとされる。
Ⅲ.G5 加齢性脳神経疾患とアンチエイジング
現時点では いずれのタイプの認知症であっても、危険因子である
DM,HT,高コレステロール決勝、喫煙などを極力へらすこと。
防御因子となる 適度な運動 を行うことなどが勧められる。
アンチエイジングの観点からは、可能な限り早期に認知症および認知症予備軍を発見して、適切な生活への介入を行うこと。
Ⅲ.H1 聴覚の加齢性変化とアンチエイジング
高音漸傾型の感音難聴、騒音下聴取困難、子音弁別能困難
現時点での難聴予防項目;生活の中で強大音をさける、禁煙、高血糖リスクをへらす。
マウスではカロリー制限
発症した老人性難聴を回復させる方法はないので
補聴器:認知機能、社会性、感情、うつ状態、コミュニケーションの改善に有用
高齢者は言語コミュニケーションを失うことは、精神的、社会的な退行につながる。
Ⅲ.H2 視覚の加齢性変化とアンチエイジング
老視:遠方と近方に焦点をあわせる調節は、毛様体輪状筋の収縮により水晶体の厚みに変化が生じることにより行われているが、加齢により水晶体の弾性が低下することによって毛様体輪状筋の衰えにより調節力は低下していく
通常40歳代から、近見作業での不快感で生じる事が多く、年齢とともに進行していく。
白内障:80歳以上ではほぼ100%に白内障を認める。BMI高値やDMなど代謝疾患では進行早い
加齢黄斑変性 網膜の視力の中心部分である黄斑部に、加齢により60歳以上で生じる不可逆的な疾患
前駆症状として、網膜下に沈着する細胞外沈着物であるドルーゼンが生じることがある。
滲出型(急激な中心視力低下)と萎縮型(網膜の萎縮とともに徐々に視力下がる)
緑内障 加齢がリスクファクター 40台の2%、70台で7.6%
Ⅲ.H3 平衡感覚の加齢変化とアンチエイジング
65歳以上の2割になんらかのめまい症状
半規管機能と同様に、耳石器の機能も加齢とともに低下する
前庭機能低下による平衡障害には、前庭リハビリテーションが有効:頭部の運動を繰り返しおこなうことで、末梢前庭を刺激し、中枢神経系の可塑性や他の部位による前庭障害の代用を促進する。
前庭障害による平衡障害にみならず、心因性のめまいや小脳障害による平衡障害にも有効である。
Ⅲ.I1 皮膚 容貌 体型 ダーマトポローシス
見た目は資産
美と善の認識部位は脳中枢では近い
腹囲はBMIと独立して、強い死亡リスクとの相関がある。
見た目年齢の重み付け この順で見た目に関連
ほうれい線の長さ
ヘモグロビン度数
しわの深さ
眉毛の位置
ヘモグロビンの分布
ヘモグロビンの濃度
メラニンの分布
肌理の粗さ
しわの分類
肌理の荒れ
小じわ
しわ
大じわ
たるみ 皮膚の下垂が原因
ダーマトポローシス 皮膚粗しょう症
皮膚老化に伴い、表皮の菲薄化、真皮コラーゲン、ヒアルロン酸などの支持組織の減少や脂肪組織の減少、血管の脆弱性が絡んで、皮下出血が20〜30歳代にくらべて起こりやすい状態。
Ⅲ.I2 皮膚老化 しわ しみ くすみ
40歳を過ぎた人の顔や頸部の皮膚では、真皮上層〜中層にかけて弾性繊維が糖化ストレスのためカルボキシルリジン化を起こし、日光性弾性線維変性症 solar elastosis と呼ばれる。
原因は 紫外線A Bの両領域
紫外線Bを浴びた角化細胞から分泌されたIL-6やIL-1αが真皮線維芽細胞に働き、matrix metalloproteinase(MMPs) を生成、放出し その結果、真皮のコラーゲンと弾性繊維が切断減少し、しわになると考えられている。
現時点で 光老化 しみ しわの最良の予防策は サンスクリーン剤(紫外線BだけでなくAも防ぐ)
生じる活性酸素を消去するため、ビタミンCなどの抗酸化剤を含有するものが有効
しみに対する治療としては、過剰なメラニン産生を抑えるため、酵素チロシナーゼの活性を阻止するか、あるいは酵素を破壊する作用物質を美白剤として皮膚に塗布する(アルブチン、コージ酸、ハイドロキノン、リノール酸など)。
しみを誘発するPOMC(proopiomelanocortin)は抗酸化物質で抑制される
光老化は乳幼児期から始まる。
しみやそばかすの治療には intense pulsed light IPLが有効
また 真皮性色素沈着にはレーザー治療がよい。
深いしわの治療には ビタミンAの誘導体であるレチノイン酸が有効
しかし レチノイン酸は日本人の皮膚では炎症反応が強く起こるので長期間の使用は適さない
コエンザイムQ10は 真皮線維芽細胞の紫外線A,BによるコラゲナーゼのmRNA発現上昇を抑制し、紫外線AによるDNA損傷を抑制するのでしわ改善に適している。
Ⅲ.I3 容貌変化、たるみ、しわ 輪郭 顔面骨格
多くの日本人の上顔面の変化に加齢性眼瞼下垂が関わっている。加齢に伴い、上眼瞼皮膚はたるみ、上眼瞼挙筋腱膜は瞼板からはずれて後退して眼瞼が下垂する。
眼瞼下垂による視野障害を補う目的で、不随意的に前頭筋が収縮する、これにより前額の横皺を生じ、眉毛は挙上してハの字型を呈する。
Ⅲ.I4 ビタミンDと健康と紫外線
D2はきのこ類、D3は脂質の多い魚類、卵黄に多く含まれる
VD3は食事や薬剤の摂取と、皮膚での紫外線照射により産生される。
骨の健康を保つためには 必要量 600IU/日
転倒 循環器疾患 大腸がんの予防については 1800〜4000IU/日
通常に生活を営むものでは、皮膚でのVD産生が9割
皮膚でのビタミンD産生に高い有効性を示す波長はUV-Bであるが、一方でUV-Bは皮膚のしみや皮膚がんの原因となるため、過剰な日光暴露は有害リスクを高める可能性がある。
米国皮膚科学会では、現状では日光暴露の意義は認めるものの、摂取によるビタミンD栄養状態の維持が推奨されている。
ビタミンD栄養状態を維持するにあたって、通常の食事のみのビタミンD摂取量では不十分となる可能性がきわめて高いため、日光暴露は必須である。特別に日光をあびる機会を作るのではなく、過剰に紫外線を防御せず日常生活を営むことが望ましいと考えられる。
Ⅲ.I5 骨と見た目
脊柱後湾 骨粗鬆症性椎体骨折や椎間板腔の狭小化により 脊柱前方要素が短縮することによって生じることが多い。
姿勢の保持には、体幹筋の中でも特に背筋が重要であるため、背筋力が低下すると脊柱の後弯が増強する。背筋が萎縮すると、椎骨の棘突起が突出して見えるようになる。
Ⅳ.A1 アンチエイジングドックとは
老化度;筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢
老化危険因子;免疫ストレス、酸化ストレス、糖化ストレス、心身ストレス、生活習慣
Ⅳ.A2 血管年齢の評価
HT DM 脂質異常症があると 血管年齢が10歳以上高くなる。
Ⅳ.A3 神経年齢の評価
高次脳機能検査 Wisconsin Card Sorting Test
語彙の意味記憶は高齢まで保たれる
認知処理速度は30歳代を超えると徐々に低下する
Ⅳ.A4 骨年齢の評価
成人後に加齢とともに低下する骨密度は年齢相応であるか判定する指標
骨の量は20歳代から40歳代前半まではそれほど変化しない
骨密度測定法 DXAが標準的 撮影部位 日本では腰椎 国際基準は大腿骨近位部
同じ骨量でも、自身に脆弱性骨折の既往や、家族歴、過度のアルコール摂取やたばこ ステロイドの使用などあると同じ骨量でも骨折のしやすさは変わってくる。
Ⅳ.A5 ホルモン年齢の評価
加齢により分泌が低下する最も代表的なホルモンは、女性のエストロゲンであり閉経menopauseとよばれる急激な分泌停止が起こる。
副腎皮質ホルモン コルチゾルは加齢により変化しない。
ステロイド生合成系の上流にあるDHEAは20歳代でピークとなり その後直線的に低下する。
Ⅳ.A6 筋年齢の評価
筋肉量(生体電気インピーダンス法、身体計測、CTMRI、二重エネルギーX線吸収測定法,DEXA
)と 筋力(握力)
Ⅳ.A7 見た目年齢の評価 主に皮膚年齢
内因的老化と外因的老化 体型の変化ではウエストの増加が顕著である。脂肪組織の分布が変化する。
肌理 ダーモスコピーで評価
光老化と加齢老化の違い:光老化では表皮は肥厚するが、加齢では菲薄化する。
色調の黄褐色化 白色化
線維芽細胞の増加 弾性繊維の減少
メラニン顆粒の不規則な分布 メラノサイトの減少
グルコサミノグリカンの蓄積 グルコサミノグリカンの減少
Ⅳ.A8 口腔年齢の評価
現在歯数
歯周年齢;歯周ポケットの深さを測定する。歯石や出血を確認し、CPIコードを用いて1〜4に分類する。
咬合力:オクルーザルメーターを利用
飲み込み年齢;反復唾液嚥下テスト
唾液年齢;
唾液分泌量 安静時唾液検査 1.5ml・15分以下で唾液分泌低下
ガムテスト 10分間ガム 咀嚼と味覚刺激で流出する唾液を採取10ml/10分
サクソンテスト ガーゼをかみ、口腔内に分泌された唾液を吸収して量を測定
2g 2分以下で唾液分泌低下
Candida菌数 舌背に滅菌綿棒を約10分軽くこすり培地でコロニー形成を見る
Ⅳ.A9 聴力年齢の評価
聴覚障害の3つの要素;内耳を中心とした末梢聴覚器の機能低下、内耳以降の聴覚中枢神経系の機能低下、認知機能全般の低下
語音聴取能は一定音圧を超すと逆に正答率が低下するという減少 ロールオーバー減少 が
報告されており、年齢が高くなるに従い顕著になる。
Ⅳ.A10 肺の年齢の評価
呼吸機能(1秒量)は20歳前後をピークに加齢とともに低下する。
肺活量と一秒量 (FEV1)
肺年齢を高める原因の第一は喫煙 長期間の喫煙は呼吸機能の低下を急速に早め、6人に1人は1秒量が他の人よりも急速に低下しCOPDを発症する。COPDでは初期には、咳や痰、息切れといった症状に乏しくX線でも正常であるが1秒量の低下は初期から現れる。
Ⅳ.A11 眼の年齢の評価
整容的な評価:眼瞼下垂、結膜弛緩症、瞼裂斑、翼状片、老人環、
視機能的な評価:老視と白内障、加齢黄斑変性、緑内障、ドライアイ、飛蚊症と網膜剥離、水疱性角膜症
Ⅳ.A12 酸化ストレスの検査と評価
現状で、血中や尿中の抗酸化能や、酸化生成物を比較的簡便に測定するgolden standardはない。
Ⅳ.A13 心身ストレスの検査と評価
抗加齢QOL共通問診票
コルチゾール
DHEA-S ストレスが過剰になるとコルチゾールが優先的に産生されDHEA-S含む他のホルモン産生が減少する。
くよくよしたらまず歩く
Ⅳ.A14 糖化ストレスの検査と評価
糖化ストレスマーカー
糖化最終生成物 AGEs HBA1c CML:カルボキシメチルリジン
CMLの測定法にはまだ問題が多い。
まだ糖化ストレス抑制素材の有用もはっきりしなものはないよう。テキストに記載なし。
計測が難しい理由のみ記載
Ⅳ.A15 免疫力の定量的測定と評価
死因 1癌 2心疾患 3感染症と脳血管障害 感染症が増えてほぼ同レベルになっている。
免疫系が動脈硬化や癌の発生に深く関わっているので、高齢化に伴う免疫機能の低下が日本人の死の背景にあるといえる。
T細胞、B細胞、NK細胞やリンパ球の増殖能などをしらべるテストを実用化しているベンチャー企業がある。
Ⅳ.A16 生活習慣:身体活動と体力の測定と評価
メッツ 代謝当量;安静時のエネルギー消費量を1としたときの何倍のエネルギーを費やしたかという概念
座位を含む安静 1.5メッツ以下
低強度運動 1.5〜2.9
中強度運動 3〜5.9メッツ
高強度運動 6メッツ以上
質問紙法(身体強度やドメインを性格に記憶している人が少なく定量性や妥当性が高くない)と活動記録法
活動量計(歩数計含む):対象者がどのような目的や意図をもって活動しているのかを加速度で評価するのが難しい。対象者に負担強いない。
Ⅳ.A17 生活習慣 食生活の評価
バランスのよい食事が基本
日本の食事摂取基準は、健康増進法に基づき厚生労働大臣が定めるもので、国民の健康の保持、増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギーと栄養素の量の基準を示すものである。5年毎に見直し。アンチエイジング視点では策定されていない。
Ⅳ.A18 生活習慣 心理面におけるwell beingの評価
近年のwell being 尺度 2つの相関する次元から構成されるという考え
快楽的次元 hedonic その時その時に感じられるもの
ーーーー主観的幸福 subjective well-being と生活満足感
人生の意味の理解や目的の達成などによる喜びに関する次元 eudemonic
ーーーーーーーこっちは複雑
自立、環境制御力、積極的な他社関係、人生の目的、自己受容 これらが異なった側面から深い喜びにつながるとしている。
Ⅳ.B1 メタボリックドミノ
まず肥満、内蔵肥満、そしてアディポサイトカイン分泌異常、インスリン抵抗性などを引き起こし、HT,食後高血糖、脂質異常症といった病態がほぼ同じ時期に生じてくる。
これがメタボリックシンドロームの段階。脂肪肝、さらに非アルコール性脂肪肝炎といった病態もこの段階で生じ、糖脂質代謝の中心臓器の一つである肝臓の機能障害がこれら複数のドミノが同時に倒れることに寄与する。動脈硬化症はこの段階からすでに徐々に進んでおり、生命予後に直結する虚血性心疾患や脳血管障害などの発症につながっていく。
Ⅳ.B2 心血管代謝とエイジングプロセス
加齢に伴う低レベルの慢性炎症プロセスの持続的な活性化による組織の破壊とリモデリングが亢進し、最終的に不可逆な機能障害に至る。
長寿者では炎症が惹起されにくい(もともと高齢者ではIL6やTNFαなどの炎症性サイトカインの増加がみられる。)
老化細胞が分泌する種々のメディエーターが周囲の組織に炎症を引き起こす現象
senescence-associated secretory phenotype (SASP)が重要な役割を果たす
CRPは独立した冠動脈危険因子である
Ⅳ.B3 アンチエイジングから見た動脈硬化症
血管の加齢とともに、動脈壁は肥厚し内膜細胞下のコラーゲンが増加しエラスチンは減少する。マトリックスメタロプロテイナーゼ活性は亢進し、さらにプロテオグリカンおよび血管平滑筋細胞が増加する。また血管内皮の酸化ストレスの感受性や炎症性メディエーターが増加し一酸化窒素(NO)の産生は減少する。
これらの結果、動脈の伸展性の低下、末梢血管抵抗の増加、血圧の上昇、脈波伝播速度の増加がおこる。
脈圧の増大は血管の老化の指標とされる
LDLコレステロール値を低下させるスタチンはコレステロール値によらず血管の老化を予防する。
SIRT1は血管老化に関連しSIRT1を抑制すると血管内皮細胞の寿命が短縮する
レスベラトールはSIRT1を間接的に活性化し、一酸化窒素の産生を増加させ血管老化を抑制するため、治療薬として研究されている。
Ⅳ.B4 メタボリックシンドロームと認知症
日本での老年期の認知症の内訳はアルツハイマー病(AD)が最も多く、次いで血管性認知症が多い。
中年期高血圧は高齢期認知症の危険因子
DMはADの危険因子
Ⅳ.B5 腸内細菌とメタボリックシンドローム
ヒトの腸内細菌叢はその構成に個人差が大きく、多様性に富み、一方その組成は個人内では安定していることが知られていたが、組成が宿主のエネルギー状態を反映することが2005年に報告された。
哺乳類は植物細胞壁の主成分であるセルロースなどの線維性多糖を分解する酵素をもたないため、腸内細菌によりこれらが短鎖脂肪酸などに発酵分解されることでエネルギー源として回収する。
高脂肪食摂取後の健常者および2型糖尿病患者で血中エンドトキシン濃度が高地であること、また健常者で食事のエネルギー摂取量と血中LPS lipopolysaccharideが高値であること、また健常者で食事のエネルギー摂取量と血中LPS濃度との間に相関がみられることが報告されている。
Ⅳ.B6 メタボリックシンドロームと骨加齢
2型DMでは骨密度にかかわらず骨折リスクが増加している。
高コレステロール血症が骨粗鬆症のリスク因子であることが示唆されている。
一方、高コレステロール血症の治療薬であるスタチンは骨芽細胞に直接作用して骨形成を促進することが知られている。 スタチン投与は大腿骨密度を増加させ骨折リスクを下げる。
高血圧がカルシウム代謝異常をきたす理由は、血圧上昇により腎からのカルシウム排泄が増加し、続発的に副甲状腺ホルモンの増加が引き起こされることにより骨からのカルシウム動員が高まり、骨量が減少するといわれている。
メタボリックシンドロームでは内臓脂肪の蓄積により腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインが産生され、酸化ストレスや慢性炎症も骨質劣化の要因となる。内臓脂肪により分泌されるアディポサイトカインが骨代謝に影響することも明らかになってきている。
Ⅳ.B7 メタボリックシンドローム・肥満とメンタルヘルス障害
肥満はうつ病の危険因子であり、かつうつ病は肥満の危険因子である。
うつ病は糖尿病や肥満を増やす。うつの男性は将来的に肥満やMETs: metabolic syndromeになりやすい。
Ⅳ.C1 肥満克服を目指した食事
肥満の原因があきらかでなく、過食や運動不足など生活習慣の乱れと関連の強いものを原発性肥満と定義
肥満の原因があきらかなもの 二次性肥満と定義:内分泌性肥満、遺伝性肥満、視床下部性肥満、薬剤性肥満
体格指数 body mass index: BMIが 25kg/m2以上を肥満とするが 25以上でも明らかな健康障害を伴わない場合は疾患単位としない。
ハイリスク肥満: BMI25以上で、現在は健康障害がなくても、臍高レベルCTで内臓脂肪面積が100cm2のもの→ 生活習慣改善の介入対象
BMI22において最も健康障害が少ないとされるが、一気にBMI22まで減量しなくても現在の体重をたかだか3%ないし、3kg減らすことで耐糖能や脂質、血圧の異常が改善することが少なくない。
急激な体重減少後のリバウンドを防ぎ、長期的に食事療法の効果を上げるためには運動療法、行動療法、心理療法を適切に組み合わせ個々の実情に応じた適切なエネルギー摂取量と目標体重を定める個別化医療の実践が求められる。
減量と インスリン抵抗性軽減のためには
単純糖質の過剰摂取の改善
血糖上昇係数 glycemic index GI の低い食物の摂取
水溶性食物繊維や難消化性多糖類の摂取
高脂肪食の過剰摂取の改善
多価不飽和脂肪酸の適切な摂取
食塩過剰摂取の防止を指導する。
肥満、肥満症患者では短時間睡眠や睡眠の質の異常、夜更かし習慣など生体リズム異常を伴っていることも多い。→ 朝太陽の光浴びる、朝食を欠かさず摂取する ヒトの概日リズム25時間の日内リズムがリセットされる。
Ⅳ.C2 胎児 小児期の栄養指導
胎生期低栄養(低出生体重)はネフロン数の減少に影響して腎機能低下のリスク要因になり、成人期のDM,肥満、HTのリスクとなる。
小児期の栄養指導は、成長期であることを考慮し、摂取エネルギーの制限を厳しくしすぎず、栄養のバランスを整えることを優先する。基本的な考え方は成人肥満と同様であり、骨格筋を減らさないように、体脂肪量を減らすように、を目指した比較的高蛋白質、比較的低炭水化物(エネルギーのタンパク質比20%、脂質比25%、炭水化物比55%前後)を目安にして3大栄養素を配分する。
ゲノム修飾はDNAの塩基配列の変化を伴わない情報記憶と遺伝子の発現調節であり、発生や分化など多様な生命現象にかかわりDNAメチル化やヒストンの修飾、クロマチン構造の形成とリモデリングなどにより制御されている。
Ⅳ.C3 心血管疾患予防を目指した食事
BMIが高いほど男女ともに脳卒中のリスクが、男性のみ心筋梗塞のリスクが高くなる
食塩の過剰摂取が血圧上昇と関連。減塩により降圧する。
脂質には 獣鳥類の脂に多く含まれる飽和脂肪酸と、植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸(多価および1価)がある。多価不飽和脂肪酸はヒトが体内で生合成できないため食物から摂取する必要があり、ω6系とω3系に分類される。
ω3系多価不飽和脂肪酸のなかでも魚介類に多く含まれているエイコサペンタエン酸 EPAや
ドコサヘキサエン酸 DHA といった炭素鎖が長い長鎖ω3系脂肪酸の摂取が心血管疾患の発症や死亡に予防的に働くとの報告が国内外よりなされている。
果物や野菜の摂取が増えると、心血管系疾患のリスクが減る
習慣性飲酒者では収縮期血圧が高い
アルコール減量の大きさと関連して、大きく降圧する
日本酒換算で、一日2合以上飲酒していた者では、非飲酒者に比べて脳卒中の発症リスクが39%、
3合飲酒者では71%高いことが知られている。
Ⅳ.C4 がん予防を目指した食事
がんの主な要因は4割が食事、3割が喫煙
逆に食事を変えて、生活習慣の改善を計ればがんの7割程度が抑制できる。
食事関連がんの発生の主な要因
塩分過剰
動物性(4足歩行)蛋白、脂肪の代謝障害
クエン酸回路代謝障害
血中活性酸素過剰
がんの要因回避を目的とした食事指導
塩分制限 一日5g以下
動物性蛋白(四足歩行)脂肪の制限(週3回以下)
大量の野菜、果物の摂取 750mlのしぼりたてジュース
玄米、五穀米、全粒小麦、大豆(豆腐)、芋の適宜摂取
乳酸菌(ヨーグルト200cc)海藻、きのこ類を毎日
蜂蜜(大さじ2胚)レモン2個、エビオス20錠
食用油はオリーブオイル、ごま油、菜種油など植物のものを中心に
自然水 ナチュラル、ミネラルウォーターの飲用
Ⅳ.C5 高血圧予防を目指した食事
高血圧 140/90以上
通常家庭血圧は診察室血圧より低く、135/85 以上が高血圧
日本高血圧学会ガイドラインでは 食塩6g/day以下が目標値
これがかなり難しいため 厚生労働省の基準では
男性8g未満、女性7g未満を目標
下限は3g以上
カリウム、カルシウム、マグネシウムは野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な降圧効果を有する食事パターンであるDASH食 dietary approach to stop hypertension の主要な栄養素の一つとして知られている。
カリウムの降圧効果は食塩摂取量の多いものほど有効。ナトリウムの効果に拮抗するものと考えられる。
食品加工のさいにナトリウムが添加されカリウムが失われていくことから加工食品が汎用されている先進国では食塩の摂取が増え、カリウムの摂取が減る傾向にあり、カリウムの積極的摂取を推奨すべきである。
Ⅳ.C6 糖尿病予防をめざした食事
BMI25以下に減量するようにするとDM発症率が67.4%減少する。
総エネルギー量の50〜60%を炭水化物として摂取
タンパク質エネルギー比率が20%を超えた場合に、DM発症リスクの増加、心血管疾患の増加につながる可能性が報告されている。したがって総エネルギー量の13〜20%を摂取タンパク質量として推奨する。
DM予防や死亡率の関連を検討したコホート研究から脂肪エネルギー比率は30%未満が望ましく、脂肪酸の摂取量、炭水化物やタンパク質の摂取バランスを考慮すると総エネルギー摂取量の20〜30%の脂肪摂取量が推奨される。
飽和脂肪酸増加により、肥満、インスリン抵抗性の増悪が認められることから飽和脂肪酸摂取量は総エネルギー摂取量の7%以下が望ましい。
世界の食事指導では明確な数値設定をしていない。
ADA American Diabetes Association では食事療法については基本的に患者ごとの状態に応じた個別対応とされる
推奨する総カロリー量は、適切な体重を維持する量としている。さらにADAは砂糖や果糖などを加えた高カロリー食を避け、野菜、全粒粉、豆類など多様な食品から摂取することが望ましく、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を摂取することを推奨している。
Ⅳ.C7 腎透析予防と治療のための食事
CKD 末期腎不全全透析療法への進展を抑制する目的でできてきた疾患概念
chronic kidney disease
尿蛋白などの腎臓病の存在を示す所見 もしくは 腎機能低下 eGFR60ml/min 1.73M2未満 が3ヶ月以上続く状態 と定義され その原因となる疾患は問われていない。
体重 肥満ではBMI25 痩せでは 18.5をめどに指導
エネルギー 25~35kcal/kg 肥満では20~25kcal/kg
タンパク質の制限が勧められるが、過度のタンパク制限は栄養不足による体タンパクの異化により老廃物が蓄積する(腎毒性)ため望ましくない。
CKDステージG3では 0.8~1.0g/kg体重/日のタンパク摂取が勧められている。
脂質 タンパク制限を補うため多めに。 エネルギー摂取比 20~25%
炭水化物 エネルギー総量から タンパク質 脂質の摂取量をひいたもの
DMでは 砂糖などの単糖類はさけ、多糖質(デンプン)を上手に利用する。
Na 1日あたり3〜6gに制限
Ⅳ.C8 骨量増加をめざした食事
女性では閉経の直前から急激な骨量減少が生じる。
骨の健康維持のためには 一日3度の食事をしっかり取ることが重要
積極的な身体活動
低骨量の危険因子
やせ
低栄養
Ca摂取不足
ビタミンD不足
ビタミンK不足
Ⅳ.C9 認知症予防をめざした食事
カロリー制限
介入研究ではほとんど上手くいっていない。
発病後の介入では遅い。
Ⅳ.C10 精神疾患症状予防をめざした食事
ビタミンC欠乏→壊血病→うつ
ビタミンB1欠乏 → 脚気 → 記憶障害を主としたさまざまな精神疾患
ビタミンB6不足 → うつ症状、錯乱 ときにけいれん発作
ナイアシン欠乏=ペラグラ →睡眠障害、うつ症状 幻覚 妄想
インスリン抵抗性と代償性の高インスリン血症が認知症の成因に密接に関わっている。
精神疾患患者への栄養指導
ω3系脂肪酸
フィトケミカル; りんご ベリー類、柑橘類、ぶどう、緑茶、紅茶、烏龍茶、チョコレートなどのフラボノイドを豊富に含む食品
ビタミンB群 加工食品や精製食品で不足しがち 新鮮な葉物野菜から葉酸を十分に摂取しVBは肉魚から補充。 飲酒はなるべく控え、飲酒の機会では代謝で消費される亜鉛、ビタミンB1, ナイアシンなどを含む食品を摂取するように
ビタミンD : 卵黄や油の多い魚を摂取 サプリ 日光にあたる
Ⅳ.C11 魚とアンチエイジング
タウリン: ブリ、牡蠣、タコ、イカ 体内では胆汁酸と結合しタウコロール酸などの形で存在する。
消化作用を助けるほか、神経伝達物質として作用
HDCP; マグロなど回遊魚 ; 生体ph平衡能、金属キレート作用、抗酸化作用、抗疲労効果、尿酸値植生、血圧降下作用、抗炎症作用
ACE阻害ペプチド;アンジオテンシンⅡの産生に関わるACEの活性抑制
カツオ節、イワシ、のり、わかめ
イヌイット(エスキモー人) 総カロリーの40%を脂肪から摂っているのに虚血性心疾患が少ない。アザラシからω3PUFA(polyunsaturated fatty acids)を多量に摂取しており、その結果、血漿脂質についても中性脂肪やコレステロール値が低い。
ヒトではω6系脂肪酸も必須脂肪酸として重要。←これは日本人だいたい足りている。
ω3系を増やして、日本人の食事から摂取される平均的なω6/ω3PUFA値(ほぼ4とされる)を2〜3程度にすべきであるとされている。
日本脂質栄養学会監修;心疾患予防
DHA;脳内に最も多く含まれている脂肪酸
ADでは脳のDHA存在量は健常者の半分に。
DHAやEPAのようなω3PUFAはきわめて参加されやすい→ 抗酸化物質を一緒にとらないといけない。
たとえば大豆イソフラボン
Ⅳ.C12 ベジタリアンは長寿か アンチエイジング医学からの検証
ベジタリアニズムの利点は栄養学的にはカロリー制限と肉類の過剰摂取の抑制、豊富な抗酸化物質と食物繊維によるものである。
ホルミシス効果; 生体が低レベルのストレッサーに暴露されるとき、発現する、生体にとって有益な反応のこと。
動物性脂肪は飽和脂肪酸が多く含まれており、肉類の過剰摂取は循環器疾患のリスクを高める。
肉類の多く含まれるタンパク質の過剰摂取はインスリン様成長因子IGF-1の分泌を促進し、がん疾患のリスクを高める。
沖縄の百寿者 野菜多く摂取 タンパクを大豆から取る 低カロリー低蛋白食
ビタミンCなどの抗酸化物質はサプリメントとして摂取した場合あまり効果的でないために、野菜や果物などの食事から摂取することが望ましい。
食物繊維、特に水溶性食物繊維は、血糖値やコレステロール値を改善する。水溶性食物繊維は糖質の吸収を穏やかにし、急激な血糖値の上昇を防ぐため、糖尿病予防効果が認められる。また水溶性植物繊維は胆汁酸の再吸収を抑え、コレステロールの産生を抑制するため脂質異常症の改善効果も見られる。
Ⅳ.C13 オイルとアンチエイジング
トランス脂肪酸は血中のLDLコレステロールを増加させて動脈硬化を促進させ、心血管疾患リスクを高める。
不飽和脂肪酸の リノール酸(ω6)アラキドン酸(ω6)αリノレン酸(ω3)は体内で合成できない必須脂肪酸である。
αリノレン酸(ω3)から体内で一部がエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHAに変換される)
これら必須脂肪酸が欠乏すると皮膚炎などが現れる。
Ⅳ.C14 発酵食品とアンチエイジング
発酵乳 免疫賦活効果
大豆 イソフラボン
魚介類 DHAなどω3系多価不飽和脂肪酸、タウリンがアンチエイジングに有効
豆乳ヨーグルト 良い。
Ⅳ.C15 アンチエイジングメニューの実際
フィトケミカル:ポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド
野菜はサラダで
野菜の色の成分がフィトケミカルなので彩りよく仕上げるとよい
1日の糖質の摂取量が120g以下になると脳や、筋肉で使われるエネルギー源が糖質から一部、ケトン体にシフトする。
ケトン体は市脳細胞に蓄えられている脂肪酸から肝臓で合成されるのでケトジェニックダイエットは肥満症の減量療法として使われている。
血中のケトン体濃度が上がると抗酸化酵素や血液中の抗酸化物質の活性が上昇する。
カレー クルクミン 認知症予防作用
Ⅳ.Ca16 薬膳
食養 食養生
食療 食物の薬効を利用
薬膳 日常の料理の中に朝鮮人参など漢方生薬を加えて調理し一層薬効を高めること
Ⅳ.Cb1
新しい機能性表示食品の登場
薬事法 → 医薬品 医薬部外品を含む
健康増進法 → 保健機能食品 (栄養機能食品、特定保健用食品:トクホ)
それ以外の枠に いわゆる健康食品 ←効果のような文言はいれてはいけない
Ⅳ.Cb2
サプリメントの機能性 感覚器
白内障 マルチビタミンで水晶体核の混濁は抑制したが後嚢下白内障は増加
ドライアイ 食事でのω3多価不飽和脂肪酸の摂取量と逆相関が示唆されている
聴覚エビデンスなし
嗅覚エビデンスなど ステロイドとテオフィリンは効果あり
サプリはエビデンスなし
味覚 亜鉛 塩味はよくなるけど他はだめ?
Ⅳ.Cb3 サプリメントの機能性 口腔 歯科
齲歯予防 キシリトール有効 血中のグルコース濃度にほとんど影響与えない
齲歯菌のひとつであるミュータンス菌はキシリトールをエネルギーに変換できないため、
ミュータンス菌数を減少させることで抗齲歯効果を期待したガムやタブレットなどあり
歯周病 進行すると歯周ポケット深くなる→歯槽骨吸収 → 歯の喪失
1歯ブラシによる清掃
2 コエンザイムQ10 還元型CoQ10の摂取は口腔内の環境を改善させる
ドライマウス 口腔乾燥 味覚障害 疼痛
CoQ10
アスタキサンチン
イソフラボン 摂取すると 腸内細菌によりアグリコン型となり吸収される。閉経後の女性は舌痛やドライマウスなど口腔関連の更年期症状ありエストロゲンの化学構造と近似していることから抗酸化作用、骨吸収抑制 歯の再石灰化促進 口臭予防など効果期待されている。
Ⅳ.Cb4
サプリメントの機能性
VD 魚類や干ししいたけに多い 食事からの摂取が難しければサプリで天然VDを
VK 骨基質タンパクの成熟に必要な補酵素 不足は高齢女性の大腿骨頚部骨折のリスク↑
甲状腺ホルモンの65%はヨウ素
健常人がヨウ素を過剰摂取しても甲状腺機能は正常に保たれるが、甲状腺に橋本病などの病変がある場合や尿中への排泄障害があると可逆性甲状腺機能低下症が起こりやすく、ヨウ素を含む食品の摂取制限が必要な場合がある。
生活習慣病
DHA EPAはともに抗血小板作用を持つため手術前や、抗凝固療法時はサプリメントとしての大量摂取には注意が必要である。
紅麹にふくまれる モナコリンK(ロバスタチン)スタチンと同じ機序でコレステロールを低下させる。
紅麹 1.2〜2.4g/日 8〜12W摂取で総コレステロール、TG, LDLコレステロールの低下が示されている。スタチンと同様に横紋筋融解症の副作用のおそれあり。ロバスタチン催奇形性あり妊娠中はよくない。
Ⅳ.Cb5サプリメントの機能性 消化器 免疫
Bifidobacterium Longum
米国ではすでに機能性表示がされている腸内細菌
ヨーグルトの一種であるが、ビフィズス菌が生きたまま腸まで届くように、耐酸性カプセルを持つ。
腸内細菌叢の正常化、腸管内での有機酸産生量の増加が、腸管の蠕動運動を促進することにより排便回数や便性状が正常化される。
花粉症に対する報告も。
ガゴメ昆布にふくまれるフコイダン 腸管免疫に作用 IFN-γやIL2産生増加
ブラジル産プロポリス 花粉症症状軽減 鼻閉改善
ラクトフェリン 免疫力増加 貧血改善 術後合併症予防 閉経後女性のエストロゲン欠乏による炎症場外の改善作用
Ⅳ.Cb6 サプリメントの機能性 皮膚科
光老化が重要 しわ しみ くすみの原因
栄養機能食品 ミネラルやビタミンに対する表示を対象にしており、成分の働きや骨などの部位に対する機能が表示できる。生鮮食品にも表示可能
特定保険様食品トクホ
個別審査、許可必要
機能性表示食品
眼や皮膚などの身体の特定部位ごとに健康維持機能について表現できる。
臨床試験または一定のガイドラインに沿ってシステマティックレビューを行うことで表示か可能となる。
疾病の治療効果、予防効果を暗示するものは表示できない
生鮮食品にも表示可能
コラーゲンペプチド
コラーゲンを摂取すると、数時間でコラーゲンペプチドが血中で上昇
直接コラーゲンを作る材料としては働かないが、コラーゲンペプチドが線維芽細胞を刺激してコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンの産生を促す機序が注目されている。創傷治癒促進効果、保湿効果
エクオール 大豆イソフラボン(ダイゼイン)は日本人では産生菌の関係で50%程度しかイソフラボンに変換できないことからエクオールを直接摂取することが効率的である。女性の更年期障害や皮膚の保湿や弾力の改善効果
紫外線予防
slip 着よう slop 塗ろう slap 被ろう
UVAが真皮で炎症反応を起こすことからVCやVEを摂取したり抗酸化物質を摂取する考えがある
いわゆる飲む日焼け止め ←これだけじゃだめ。
Ⅳ.Cb7 サプリメントの機能性 男性医療
日本人は大豆製品からのイソフラボン摂取量が多いことが前立腺がんの発生率、死亡率が低い原因の一つと考えられている。
BPH ノコギリヤシ 軽症〜中等症のものに有効
ED NOが関係 nNOSによりNOが産生 海綿体の平滑筋から環状グアノシン一リン酸が産生されることにより陰茎海綿体が弛緩しはじめ、血液が弛緩した海綿体に流入して起こる。さらに血管内皮からeNOSによりNOが持続的に放出されることにより勃起が維持される。
Ⅳ.Cb8 サプリメントの機能性 女性医療
更年期症状 hot flush
のぼせ ほてり 発汗の血管運動症状に加え、抑うつ 不眠の5大症状
大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから腸内細菌によってつくられる代謝産物 エクオールがその活性中心
エクオール産生には個人差があり、欧米で約30% 日本人で約50%
エクオール 乳酸菌であるラクトコッカスにより大豆胚芽を発酵させたもの SE5-OH
ヒトでいろいろエビデンスあり。
10mg 日で 更年期症状、骨代謝、骨密度 心血管リスク因子軽減
30mg 日 3ヶ月摂取で 皮膚老化に対するエビデンスあり。
Ⅳ.Cb9
サプリメントの機能性 脳神経
EPA エイコサペンタエン酸 DHAドコサヘキサエン酸
ω3系不飽和脂肪酸 青魚の多い 脳卒中予防効果
EPA DHAは脳にもともと含有量多い
DHAは軽度認知障害の認知機能を改善する
緑茶を1日5杯以上のむと認知症リスク 0.46倍に低下 Kuriyama 2006
カテキン量が高いため?か
銀杏葉エキス PAF platelet activating factor阻害作用あり 血液凝固系を抑制して脳組織への酸素とグルコース供給を改善することが知られている。
Ⅳ.Cb10 サプリメントの機能性 運動器 スポーツ
炭水化物 持久力について効果あり
十分なエビデンスを示すものは少ない。副作用リスクの十分検討されていないものが多い。
Ⅳ.Cb11 サプリメントの機能性 循環器 血管
心不全や動脈硬化を生じている血管では、老化が促進しておりp53をはじめとする老化分子発現亢進と、これに伴う心機能低下、血管機能不全が疾患発症に関与する。
EPA 中性脂肪合成に関わる転写因子の抑制 VLDL代謝促進→脂質低下作用
DHA 血液脳関門を通過 学習能力 記憶能力向上、認知症予防効果
レスベラトロール 赤ワイン 強力な抗酸化作用 サーチュインを活性化
抗老化作用を発現するのに必要な量のレスベラトロールは ワイン3,4杯→サプリ有用と考えられる。
CoQ10 抗酸化物質
CoQ10は HMG-CoA還元酵素により生成されるメバロン酸を減量として生合成され、スタチンにより合成量が低下する。心不全患者の多くは脂質異常症や、虚血性心疾患を有し、スタチンを内服している事が多いため、このような患者へのCoQ10補充療法は特に効果が期待できる。
医薬品でも従来は用量が30mg程度とすくなかったが、近年200〜300mgという高用量を使用することにより心機能や症状のみならず予後を含めた心不全治療効果が再確認されつつある。
Ⅳ.Cb12 サプリメントの安全性
ビタミンやミネラルは日常の食事からの摂取量を考慮しないでサプリメントから摂取すると過剰摂取状態になることがある。例えばカルシウムサプリメントの利用者の中には食事からもカルシウムを摂取していてカルシウムの過剰摂取により心血管系の疾病リスクが高いことがある。
Ⅳ.Cb13 サプリメントの医薬品との相互作用
医薬品は基本的に
A absorption 吸収
D distribution 分布
M metabolism 代謝
E excretion 排泄
によって 身体に影響を与える。
通常使用される医薬品の大半が 薬物代謝酵素 シトクロームp450によって代謝される。
多数の亜型あるが、90%以上はCYP1A2, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP3A4の5種類で代謝
この代謝酵素が誘導されれば、医薬品の代謝が促進されて結果的に有効濃度を保てなくなる
→ セントジョーンズワート いろいろ薬効減少させる。
薬物代謝酵素の阻害による副作用の発現
グレープフルーツジュース →医薬品の血中濃度が異常上昇することあり
医薬品と同じような作用をする健康食品による作用の増強
銀杏葉 血液凝固阻止作用 かなり強い 単独でも脳出血の方向あり
ワーファリンと併用で脳出血例あり
ビタミンK 血液凝固促進作用
青汁、クロレラ、納豆など → ワーファリン投与中の患者が多量に摂取するとワーファリンの作用を減ずる恐れがある。
脂溶性の高いグリセオフルビンなどの抗真菌薬は牛乳などと一緒に服用すると吸収が促進されて血中濃度が本来の6倍くらいまでになる報告がある。
テトラサイクリン系の薬剤は牛乳中のカルシウムと難溶性の複合体を形成して吸収阻害→血中濃度が異常に低くなることがある。
Ⅳ.Cc1 漢方とアンチエイジング
漢方の 未病 の考え方はアンチエイジングの基本です。
漢方では老化を「腎の気」が衰えた「腎虚」の状態と表現します。
ここでの、腎は腎臓のことではなく、
そのヒトが生まれ持っている生命エネルギーを宿す仮想の場所のことです。
伝統医学的には腎虚の状態は、精力減退、下肢筋力低下、視力低下、脱毛、排尿障害、陰萎、耳鳴りなど老化に伴うさまざまな症状を指します。
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老化の代表的なパターン2種と漢方処方例。
1. 胃腸が丈夫なまま血管系が老化するタイプ: メタボリックシンドロームのような状態
→八味地黄湯(保険適応は、DM,HT,前立腺肥大、腰痛、陰萎、白内障、耳鳴りなど)
2.胃腸から弱っていくタイプ→真武湯
胃腸機能が低下し、冷え、食べ過ぎで下痢をしやすい。
朝方に下痢を2〜3回するような高齢者に。
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高齢者に用いられる漢方
不眠:体力が中等度で、いらいらや神経過敏の傾向かある場合には抑肝散がよい。
少し体力が低下している場合は、酸棗仁湯(さんそうにんとう)
食用不振を伴う場合は、帰脾湯(きひとう)
睡眠導入剤や安定剤と異なり、就寝前にだけ飲むのではなく1日3回服用してもらっても
昼間の眠気は誘発しない。
他に漢方薬を服用している場合には就寝前のみの服用でも構いません。
腰痛、しびれ:八味地黄湯、牛車腎気丸 (胃腸が丈夫なとき)
疎経活血湯 (胃腸が丈夫でないとき)
耳鳴り:八味地黄湯(胃腸が丈夫なとき)BPHによる夜間頻尿排尿障害にもよい
釣藤散
便秘:加齢により腸管の細胞内水分が不足し乾燥気味になり便秘になるケースの場合、
潤腸湯、麻子仁丸
多愁訴であっても、1つの漢方薬で対処するのが漢方治療の特長。
Ⅳ.Cc2メディカルハーブとアンチエイジング
ノコギリヤシ 抗アンドロゲン作用 5-α-還元酵素阻害作用あり、前立腺肥大に対し処方
セントジョンズワート (西洋おとぎり草)ACTH分泌抑制作用 抗うつ剤として
創傷治癒促進、抗菌作用
ウコン 作用成分:クルクミン 抗炎症、抗酸化、発がん抑制作用 βアミロイド低下
オリーブ オーレオペンとよばれるポリフェノールが含まれ、免疫や気道感染に効能
LDLの酸化を抑制する作用 血管拡張作用、血小板凝集抑制作用
医薬品との相互作用を知っておくことが重要
Ⅳ.Cd1 アンチエイジングと身体活動、運動の疫学
健康上の利益を得るために身体活動を始めるのに、決しておそすぎることはない。身体活動量、フィットネスを高く維持しているか、ないしは低い人でも高くなった人ではずっと低い人に比較するとその後の死亡率や冠動脈疾患発症率が低いことが広い年齢層で示されている。
乳がんや骨粗鬆などは幼少期の身体活動量や生涯の身体活動量のほうが 直近のものよりも発症率に関連する結果が出ている。 小さい頃から活動的に。それを保つことが重要。
Ⅳ.Cd2 動脈のアンチエイジングと運動の生理学 生化学
有酸素運動は、脂肪を燃焼し肥満を予防、改善させるだけでなく 心血管リスクの改善に効果的
ストレッチでも動脈硬化リスク下がる
Ⅳ.Cd3 筋 骨格のアンチエイジングと運動の生理学 生化学
インスリン抵抗性 骨格筋細胞内脂質 intramyocellular lipid IMCLの蓄積が原因かと注目されている。
非肥満者でも起こる。 エイジングでも起こる。
ミトコンドリア機能が加齢とともに低下し二次的にIMCLの蓄積を引き起こしインスリン抵抗性に寄与していると考えられている。
運動はミトコンドリアの活性や量を高め、上記に予防的に働く
サルコペニア 加齢による骨格筋の量的な減少変化
骨密度低下 一般的に骨吸収の亢進が骨形成を上回るために生じる。これらに加えて加齢に伴う骨芽細胞機能およびそれに伴う骨形成の低下や、カルシウム吸収能の低下も骨密度低下の要因となる。
ヒト骨におけるコラーゲン含有量は30〜40歳代がピーク
加齢とともにコラーゲン分子間に老化型の架橋が増加→骨の微小骨折の原因 骨強度低下
老化架橋の本体は酸化や糖化によって誘導される 週末糖化産物 advanced glycation and products
AGEs
Ⅳ.Cd4 アンチエイジングのための運動の実技と実際
サルコペニア予防に最も有効と考えられる運動処方は高負荷を用いたレジスタンストレーニング80%1RM 1回最大挙上重量 one repetition maximumの80%負荷 最大反復回数にして8回程度に相当
により大きな筋肥大筋力増強効果が得られる
これでは 血圧上昇や怪我のリスク高まるので
高齢者向けには 50%1RMで行われる事が多い ただし これでは筋肥大、筋力増強の大きな効果を期待することはできない。
四肢の基部を 加圧して行うと 30%1RM程度の負荷強度でも筋肥大、筋力増強を得ることができる。
ただし、トレーニングの対象筋は ベルトを装着できる四肢に限定される。
3秒あげ 3病下ろし程度の速度で筋発揮張力を維持しながら行う、筋発揮張力維持法(スロートレーニング)も30〜50%1RM程度の負荷を用いて高付加RTと同等の筋肥大、筋力増強効果を得られる。
運動の実施によって神経炎症の減少、脳血管の新生、また脳由来神経栄養因子(brain derivered neurotrophic factor; BDNF)の生成が促され、脳の神経細胞の新生や細胞同士のつながりの増殖が起こることなどが動物実験から示されている。
Ⅳ.Cd5 厚労省お健康づくりのための身体活動基準2013 アクティブガイド
1 日常生活における歩数の増加 1000〜1500歩の増加
2 運動習慣者の割合の増加
3 住民が運動しやすいまちづくり 環境整備に取り組む自治体の増加
個人の生活習慣のみでなく社会環境の整備に 目標設定
+10
今より10分多くからだを動かす。
+10によって 死亡のリスクを2.8%、生活習慣病を3.6%、ガン発症を3.2%、ロコモティブ新ドローム・認知症を8.8%低下させることができる。
Ⅳ.Cd6 認知症予防のための運動の実際
脳由来神経栄養因子 brain-derived neurotrophic factor BDNF
運動によって分泌
軽度認知障害 mild cognitive impairment 認知症に以降する危険性が高い状態
運動で処理速度や言語能力の向上ある
Ⅳ.Cd7 運動器の機能向上のための運動の実際
筋力増強トレーニング 過負荷の原則 筋力増強のためには、日常生活で必要とされる筋出力よりもやや高い筋出力を必要とする。 高齢期にはゆっくり動作させる。
目的筋肉は日常生活を支える下肢の大筋群を一時的な筋肉とする。一方、円滑な動作を行うために体幹の安定性を高めるための腹筋 背筋群を加えると良い。
関節トレーニング 関節運動により関節構成体の適度な伸張と関節液の循環によって関節のコンディショニングを行う方法
半月板や関節軟骨は血管に乏しく、リズミカルな関節運動により関節液が循環することにより組織の健康を保っている。
慢性的な膝関節痛では、痛みを避けるために長期間にわたって関節運動を避ける傾向にあり、関節液の循環が図られず治癒が遅れる悪循環となっている。
運動によって痛みがコントロールできるという経験を多くすることが有用 具体的には、運動の前後でvisual analogue scaleや10点法によって痛みを可視化し、運動によって痛みが和らぐことを追認する方法が有用である。
Ⅳ.Cd8 生活習慣病予防のための運動の実際
非肥満者やインスリン感受性の高い群で運動はよりDM発症予防に有効
HDL-C 中性脂肪 運動で改善するが その条件かなり厳しい →HTは比較的よく運動で下がる
LDL-C は運動による改善効果が認められない
Ⅳ.Ce1 飲酒とアンチエイジング
飲酒 少量であれば非飲酒者より総死亡率すこし低くなる Jカーブ
日本人の適正飲酒量 純エタノール換算で20g/day
しかし、飲酒は血清中性脂肪を上昇させることに加えて、用量依存的に血圧を上昇させるため、脳血管障害に関しては Jカーブ現象は不明確であり、中等度以上の飲酒量では心血管疾患の死亡率も上昇する。
非アルコール性脂肪性肝疾患 nonalcoholic fatty liver disease NAFLD
に該当する少量飲酒(男性30g/day 女性20g/day以下)ではむしろ飲酒者のほうが肝障害の程度が軽いというデータも存在する。しかしNAFLDの予後は必ずしも肝疾患に規定されるものでないことに注意。
女性は男性より少量かつ短期間の飲酒でアルコール性肝炎を発症し、肝硬変へと進展する
ワイン レスベラトロール → サーチュイン活性化
ビール ホップ由来のエストロゲン様物質が含まれる 女性の更年期障害や骨粗鬆症に対する有用性
ウイスキー ブランデー 樽のオーク材から浸出したポリフェノール類
ジン 香り付けに用いられるジュニパーベリー(セイヨウネズの実)の成分には抗菌作用や利尿作用などさまざまな薬理作用があることが知られている。
Ⅳ.Ce2 コーヒーとアンチエイジング
コーヒー 4杯/day以上飲む群では全死亡率が低下し、3杯以上の群では心血管リスクが低下する。
特に女性では作用が大きいと報告されている。
コーヒー消費は認知症のリスクを低減すると報告されている。
コーヒー飲用は慢性肝疾患からの肝細胞癌発生リスクを低下させる。
乳がんリスクも下げるという報告あり。
妊娠中のカフェイン摂取が出産に悪影響あるというメタ解析結果もあるが、おおむねコーヒーには有益な作用が多いと考えられている。高齢者では認知機能なども。
Ⅳ.Ce3 緑茶とアンチエイジング
緑茶カテキン カフェイン 抗肥満効果
主に、脂質の吸収 代謝や糖質の吸収を抑制することで抗肥満効果を発揮すると考えられている。
緑茶カテキンは LDLの酸化抑制作用など抗酸化作用、血管内皮機能の改善、血管炎症を抑制することが報告されている。
Ⅳ.Ce4 禁煙とアンチエイジング
現在の喫煙率は40%程度 以前は80%程度で 年に1%程度減った。
成人女性喫煙率は平均10%と横ばいだが60代を除き 他の全年代で喫煙率上昇している。
喫煙が肺がんをはじめ24の疾患リスクを上昇させる
パーキンソン病はリスクを下げる
喫煙者の半数は これらの疾患により死亡し、喫煙者と非喫煙者の平均寿命の差はおよそ10年で何歳で禁煙しても死亡のリスクは現象するが、特に50歳で禁煙するとリスクは半減し、30歳での禁煙はリスクを非喫煙者と同じまで下げる。
Ⅳ.Ce5 香りとアンチエイジング
皮膚のアンチエイジングを香り
香り成分の中に、皮膚の弾力性を低下させるエラスターゼやコラゲナーゼの皮膚成分を破壊する酵素を阻害する作用を持つものがある。例えばジェニパーやグレープフルーツの香り成分は強いエラスターゼ阻害作用がある。
レモングラス、ローズマリー、イランイランなどの精油による抗酸化作用が皮膚の老化を抑制するとする説もあり
脳のアンチエイジングと香り
レモン、グレープフルーツ、レモングラスなどのよう柑橘系成分を嗅ぐことによって前頭前野近傍部の活性化おこる
レモングラス 認知機能障害を緩和
Ⅳ.Cf 睡眠とアンチエイジング
加齢とともに、身体の基礎代謝量は減少し日中の活動量、消費エネルギー量は減少するため身体が必要とする睡眠量は減少します。
また加齢に伴い、体内時計の位相が前進し、早寝早起きになり、眠っている時間帯が早くなります。
仕事や用事をしないで、漫然とテレビなどを見て過ごし太陽光を浴びない生活をしていると昼寝が増え、深部体温やメラトニン分泌の振幅が減少して体内時計の同調機能が低下することで不眠などの睡眠問題が生じる。
30分以内の昼寝であれば午後の眠気予防と夜間睡眠の改善に役立つだけでなく、種々の疾患の予防、アンチエイジング効果を持つ可能性がある。
眠るべき時間は何時間?
決まった時間はありません。睡眠時間は人それぞれで、朝起きたときに疲れがなく、昼間に普通に活動ができていればあなたの睡眠は足りていると考えてOKです。
寝付きが悪くても、中途覚醒が何度かあっても、昼に普通に活動できていれば不眠症ではない。
加齢とともに必要な睡眠時間が減少することと、睡眠周期に関係して夜間に何度か覚醒することは病的ではなく正常な加齢性変化です。
不眠の治療は(〜時間寝る)ではなく、日中の精神的、身体的活動に支障のない睡眠がとれること。
ヒトの生体リズムは多くの動物と同じように体内時計によって調節されています。
体内時計は約25時間の周期(サーカディアンリズム)で活動と休息のリズム信号を出しており24時間周期で変化する外部環境とは毎日約一時間のずれが生じている。
このずれを調節するのが光
睡眠に問題を抱えているヒトは起床後も室内でじっとしていることが多い。
そのような場合、起床後2時間以内に戸外へ出て、少なくとも30分以上は光を浴びるようにする。室内では蛍光灯をつけてもせいぜい300ルクス程度であるが、戸外では曇天でも3000ルクス以上と高照度である。
体内時計のリセットには光だけでなく、社会的な接触、運動や食事も大切
朝食は、脳にエネルギーを供給し、身体のリズムを整えるために大切である。体内時計のリセットには、バランスのとれた食事、朝食までの絶食期間が長いこと、朝食の量が多いことが要点。
昼光色の蛍光灯やLEDにはメラトニン分泌抑制効果のある青い光の波長が強い。夜間は赤色の光が睡眠には望ましいとされる。具体的には、就寝1時間ほど前から照度を半分程度に落とし、色温度が調節可能であれば暖色系の光に調節するとよい。
最近の研究では、高齢者の寝室照度について3ルクス未満の群と比べ肥満症や脂質異常症の有病割合が1.9倍であったと報告されています。3ルクス程度の照明でも終夜にわたってつけているとメラトニン分泌が抑制され体内時計の異常から生活習慣病になる可能性が示唆されている。対策としては足元ライトにするなど。
深夜のテレビ視聴、パソコンや携帯電話の操作は大脳を活性化して入眠障害、中途覚醒の原因となる。
眠る1時間前には控えることが大切。逆に朝使用することは脳を覚醒させるのによい。
目覚めが悪いと日中に眠気があるためついうたた寝をしてしまう、そうすると{疲れたから眠る}という睡眠欲求が低下するために夜間の睡眠の質が低下することになる。
朝は遮光カーテンを開けておくと 光刺激により体内時計がリセットされてよい目覚めにつながる。
脳の中枢時計は光でリセットし、消化管をふくめた末梢の体内時計は朝食でリセットして、脳と身体の時計を同調させることが正常なサーカディアンリズムを取り戻しアンチエイジングを達成するために重要
Ⅳ.Cg1 ストレスの理解
厚労省が労働者のアンケート 60%が何らかの不安やストレス
同じストレッサーが加わっても ソーシャル・サポートのある人とない人では受けるストレスに明らかな差がある。
Ⅳ.Cg2 エイジングとストレス
慢性心理ストレスによるHPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎系)の異常活性化がストレスホルモンを過剰発現させ精神疾患、免疫疾患、代謝性疾患、心血管疾患などの発症要因になりうると考えられている。
幼少時のストレスがテロメア短縮に影響する
ホルミシス概念
多量であれば有害性をしめす物質や作用源が少量のときには生体を刺激し、生理学的に有益な効果を生じること。
ホルミシスを誘導するストレッサーとして 運動負荷、認知刺激、カロリー制限、フィトケミカル(レスベラトロール クルクミンなど)
の摂取が上げられている。
これらによって誘導される細胞内シグナル伝達は cAMP応答配列結合タンパク質、HSF-1, NFカッパーB フォークヘッド型転写因子などの転写因子を活性化する。
ストレスマネージメントの目標は ストレスの排除ではなく ストレスレベルの最適化である。
Ⅳ.Cg3 メンタルヘルスとストレスマネジメント
人は落ち込むとき 意識が過去に飛ぶ なぜあんなことをしたのか、しなければよかったと反芻が始まる 一方 意識が未来へ飛ぶと不安になる。
思考の反芻は、反芻する思考そのものを眺めることができるようになるとよい
↓そのための手法
マインドフルネス認知療法
まずは 瞑想時に身体の感覚に注意を向けて観察する。
呼吸に合わせて、生じる腹部の感覚や 鼻腔を空気が通過する感覚など
身体の感覚に注意を向けることができるようになると、観察の対象を 考えや気分に拡げる。
何かについて考える のではなく 考え そのものを観察する
なんであんなことをしてしまったのだろう、という考えが浮かんでいるな、と観察する。
そうすることで、思考そのものと距離がとれるようになり、距離が取れることで思考に巻き込まれにくくなり反芻を抑えることができる。
Ⅳ.Cg4 リラクセーションの実際
自律訓練法は自己暗示などによって全身の緊張をとり、理想的な心身の状態である 頭寒足熱状態にする方法である。
Ⅳ.Cg5 幸福(ごきげん)とアンチエイジング
長い間、幸福はサイエンスの対象になりにくかった。
しかし、近年では科学的手法を使って幸福を評価しようとする流れが出てきている。
DRM daily reconstructive method
一日をイベントごとにわけて、それぞれのポジティブ、ネガティブの値を0〜6までの数値で段階表記して記載していくというもの。
DRMによって測定された幸福度と人生全体の幸福度は必ずしも相関しない。
離婚すると 人生の評価が低くなるが、実際にはストレスから開放されて日々の満足度は高くなる。など。
DRMによって測定できる幸福度は睡眠をしっかりとることで大幅に改善できる。←あまり知られていない。
仮説:フォーカス幻想
人は全体的に幸福かどうかを判断する能力に欠く。
生命の目的が生存にあるとすると、常に幸福かどうかをモニターする必要性はなかったかもしれない。突然、何かがきになったときに、その何かを基準にして(フォーカスして)幸福を判断するようである。sの何かが、結婚であったり、昇進であったり、お金だったりする、という仮説。これをフォーカス幻想という。
得られるお金よりも他人のどれくらいお金を使うかのほうが幸福と関連する。
従来は健康で長生きだから幸せだという方向の考え方だったが、
幸せなヒトが長生きし、病気にもなりにくいという関係が明らかになってきた。
人生を楽しんでいるヒトのほうが病気になりにくい
Ⅳ.Da1 女性ホルモンの医学
女性のエストロゲン産生器官は主に卵巣顆粒膜細胞
そのほか副腎皮質も
男性では精巣でもエストロゲンが産生される
閉経後はエストロゲン分泌は著しく低下 男性レベル以下になる
エストロゲンはコレステロールをその由来とし、脳下垂体より放出されるゴナドトロピンの作用と卵巣顆粒膜細胞および周囲の莢膜細胞との協調作業によりエストロン、エストラジオール、エストリオールの生合成が促進される。
エストロゲン 抗酸化作用、抗炎症作用、テロメラーゼ阻害作用
子宮細胞増殖作用、皮膚の弾性を保ち、シワを防ぎ、菲薄化を防止
膀胱の萎縮を防ぐ → エストロゲン投与で萎縮性膣炎は顕著に改善
Ⅳ.Da1-2 エストロゲンとアンチエイジング
ホルモン補充療法 hormone replacement therapy
更年期障害、骨粗鬆症(骨量増加させる)、脂質異常症に対して施行されることがおおい。
HRTはLDLコレステロール リポ蛋白を低下させ、HDLコレステロールを増加させるといった脂質代謝改善作用
血管内皮機能改善作用、血管拡張作用、接着因子発現抑制作用など多くの高動脈硬化作用を有する。
メタボも改善
更年期の抑うつ症状を改善する。
皮膚 HRTにより コラーゲン量の保持、皮膚の厚み維持、保水効果、弾力性低下の遅延、創傷治癒過程への関与
閉経後は唾液分泌が減少し、ドライマウスが増加する。HRTで改善→総合的に残存歯数の維持に働く
HRTの発がんリスクは5年未満の施行であればリスクは上昇せず、5年以上の思考において上昇するリスクも死亡摂取や肥満、アルコール摂取といった生活習慣病予防因子によるリスク上昇よりも低い。
HRT施行者では死亡率が30%減少する。さらにHRTの施行期間がのびるほどに総死亡率が低下する。
Ⅳ.Da1-3 女性医学とは 若年の疾患が老年期にどう影響するのか
月経周期が40日以上と稀発月経の患者では 将来的に2型糖尿病の相対危険率が2.4になる
思春期女子の骨量は10代後半に最大に達する。
閉経期に10%の骨量を増加させても、骨粗鬆症になる年齢を2年しか遅らせることができないが、思春期に獲得する最大骨量を10%増やせば骨粗鬆症になる年齢は13年遅らせることができる。
妊娠糖尿病は高率に2型糖尿病へ進展
妊娠高血圧症候群は その後の高血圧症や脂質代謝異常症のリスクとなる
妊娠後骨粗鬆症 妊娠後期、産褥期に腰痛を訴え 脊椎圧迫骨折を主病変とする疾患
Ⅳ.Da1-4 卵の加齢へのアンチエイジング 生殖医学分野の加齢とアンチエイジング
女性の年齢が35歳以上になると、妊娠率の低下と流産率の上昇が認められる。
これは加齢による卵子の染色体異常や胚発育の悪化が原因と考えられている。
卵巣中の卵子は胎児期(妊娠五ヶ月ごろ)をピークに減少し、閉経にいたるまで増加することはないといわれている。
胎児期から排卵までの何年もの間、第一減数分裂前期の途中で細胞周期が停止しているため、卵子は女性の加齢とともに
質が低下していくと考えられている。
Ⅳ.Da1-5 卵の加齢へのアンチエイジング 不妊治療
生殖補助医療 assisted reproductive technology
2013年の調べで 27人にひとりがこの方法で出生
母体の年齢上昇に伴い、受精卵の染色体異常率が上昇する
卵巣機能の低下に伴い、高ゴナドトロピン血症となり、卵胞の発育は不良となる
臨床では その悪循環を改善するために エストロゲン持続投与やカウフマン療法(ホルモン補充周期)を行う
Ⅳ.Da1-6 女性ホルモン補充療法の実際
HRT hormone replacement therapy
更年期障害 骨粗鬆症の治療
1 エストロゲン欠乏に起因する症状の緩和や疾患の治療
2 無症状の閉会後女性におけるエストロゲン欠落に伴う諸疾患のリスク低下やヘルスケアを目的に
子宮を有する女性にエストロゲンを単独で投与すると、子宮内膜増殖症や子宮内膜癌のリスクが高まることから、子宮を有する女性には黄体ホルモン製剤の併用が必要である。
経皮薬では、肝臓での初回通過効果がないため、中性脂肪や血管炎症マーカーの増加が認められず、静脈血栓塞栓症のリスクを優位に高めない。
胆石の人、C肝 肥満 メタボも 経皮投与がいい。
投与方法 エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を周期的に投与して定期的な出血を起こす周期投与法と、
エストロゲン製剤と、少量の黄体ホルモン製剤を持続的に投与して子宮内膜を萎縮させ出血を起こさないようにする持続投与法がある。
更年期障害の時期だけでなくて、その後も継続してもよい。
エストロゲン欠乏による女性の障害に
Ⅳ.Da1-7 女性医療と漢方療法
女性3大処方 当帰芍薬散
加味逍遙散
桂枝茯苓丸 けいしぶくりょうがん
Ⅳ.Da1-8 女性医療とサプリメント
大豆イソフラボン エストロゲン受容体に結合 アゴニストまたはアンタゴニストとして作用
代表的なイソフラボン ダイゼイン グリシテイン
大豆イソフラボン 1更年期症状改善、2腰椎骨密度増加、3乳がん発生率の減少
ダイゼインがさらに腸内細菌の作用により活性化したもの: エクオール
ブドウ種子プロアントシアニジン 更年期症状改善、筋肉量増加、血圧低下
Ⅳ.Da1 テストステロンの医学
加齢にともない精巣でテストステロンを産生するLeydig細胞が減少すること
また性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌量が減少することにより、加齢に伴い
テストステロン産生は低下していく
テストステロン低値を伴うものを
加齢性男性性腺機能低下症候群 late onset hypogonadism: LOH
起床時の勃起頻度低下、性欲の低下、勃起不全がそろうとLOH疑う
テストステロン値は 加齢に伴う生活習慣病に関係する疾患バイオマーカー
低下で 抑うつ、性機能低下、認知機能低下、骨粗鬆症、心血管疾患、内蔵脂肪増加、
インスリン抵抗性悪化、HDLコレステロール低下、総コレステロール値とLDLコレステロールの上昇に寄与しメタボ、心血管疾患、DM,呼吸器疾患のリスクを高める
またテストステロン低値は、内頚動脈内膜肥厚、下肢抹消動脈、大動脈の動脈硬化性疾患にも関連する。
唾液中のテストステロン値低いと店頭リスクあがる
Ⅳ.Da2 テストステロン補充療法
メタボ患者 血中テストステロンが低下
補充療法: 血中フリーテストステロン8.5mg/pg 未満が絶対適応
11.8pg/ml未満が相対適応
エナントテストステロン製剤 デポ製剤 筋肉注射
hCG製剤 投与回数多い 内因性テストステロンの誘導をめざした薬剤
男性ホルモン軟膏は 投与が用意で かつ安定した血中テストステロン濃度が得られるが
日本薬局方非収載薬品
Ⅳ.Da3 精子 精巣のアンチエイジング
34歳 総精子数 総運動精子数 全身運動精子数
40歳 精子濃度 正常形態精子 減
43歳 精子運動率
45歳 精液量、生存精子率
未確定だが CoQ10, VC, VE, ピクノジェノールが有効か
Ⅳ.Da4 勃起と射精のアンチエイジング
勃起障害 erectile dysfunction ED
は心血管系疾患発症の予測因子であり、逆に性交を維持できている男性は心血管疾患の発症が少ないといわれている。
EDを回避することは心血管疾患の予防にもなる。
EDに罹患する前に、PDE5阻害薬を定期的に服用することはEDの予防と心血管疾患の発生率低下につながる。
射精時に前立腺やその周辺器官への血流が増強することが知られている。射精は前立腺に対する
アンチエイジングにつながることになる。何歳になっても性交能力を保つということが、カップルとしての幸福感を持続させ、人生を健康で有意義に過ごすことができる
Ⅳ.Da5 メンズ・ヘルスクリニックの実際
DMでEDを合併する場合 約7割に無症状の冠動脈狭窄を認めた。
ホスホジエステラーゼタイプ5 阻害薬 PDE5 : ED 前立腺肥大
テストステロン補充により 筋肉量、筋力、骨密度、脂質、インスリン感受性の改善が認められる。
Ⅳ.Da6 男性医療とサプリメント
DMでは正常人の1.9〜4倍 EDの訴えがある
EDに対するサプリメントとしては、ナツメヤシ、人参、マカ、トンカットアリ、ピクノジェノールなど。
BPH ノコギリヤシ まだ効果微妙 最大尿流量率、夜間の尿回数減少、国際前立腺スコアを下げる
前立腺がんに対するサプリ リコピン イソフラボン、クルクミン(ターメリックに5%含まれる)
Ⅳ.Db1 がんの疫学
がんの死亡 2013年 36.5万人 総死亡数の29%
男性では 肺、胃、大腸
女性では 大腸、肺、胃 の順
がんの罹患数 約81万人
男性 胃、肺、大腸
女性 乳房、大腸、胃
がんの発生要因の多くは後天的な環境要因
その根拠は、移民におけるがん罹患率の変化(移民先のがんパターンに近づく)や
一卵性双生児においても同じがんになる確率は1〜2割以下であることによる。
喫煙、飲酒、肥満、内臓脂肪、高身長、赤肉、加工肉、アフラトキシン、ヒ素、
ピロリ菌、パピローマ、BC肝炎、HTLV1
Ⅳ.Db2 がんの分子生物学
ヒトゲノム 約22000個の遺伝子 蛋白として翻訳されるのはわずか2%程
miRNA マイクロRNA 非翻訳型RNA
20数塩基の1本鎖RNAで、主に標的となる遺伝子のメッセンジャーRNAにおける3’非翻訳領域(3’UTR)に結合することで、その遺伝子発現を抑制する。
→がんの促進または抑制にかかわると考えられている。
その発現異常は、抗がん剤耐性や浸潤、転移能などが誘導されることが報告されている。
細胞外に分泌されることによって細胞間のコミュニケーションツールになっている。
ひとつのmiRNAが複数の遺伝子群の発現を制御する
Ⅳ.Db3 がん治療のアンチエイジング
comprehensive geriatric assessment CGA 老齢者総合的機能評価
身体機能、合併症・服薬状況、認知機能、心理状態、栄養、社会支援
Ⅳ.Db4 消化器のがんとアンチエイジング
腸内細菌叢 マイクロバイオームの変化が遺伝子、エピジェネティック変化、免疫寛容を起こし発がんの原因になっていると証明されている。
健常成人では2系統の偏性嫌気性菌 Firmicutes, Bacteroidetesが90%以上をしめる。
このバランスが崩れること dysbiosis 有害な最近を含む通性嫌気性菌が増加すると炎症反応
→癌化へ
Lactbacillusや Bifidobacteriumなどを使用するプロバイオティクスは大腸がんの減少効果が報告されている。
食物繊維が豊富な食事は、腸内細菌による消化産物酪酸塩産生増加をもたらす。
再燃する偽膜性腸炎に、健常人便の移植で 抗菌薬投与よりも強い効果。
Ⅳ.Dc 減量外科
BMI35を超えるような高度肥満では、内科治療に抵抗性
現在ほとんどの減量手術は 腹腔鏡下で行われている
ルーワイ胃バイパス術
スリーブバイパス術
BMIにして10〜15 体重にして30〜50kgの減量が得られる 長期効果
肥満随伴疾患も改善
Ⅳ.Dd 美容医療
老人性色素班 ケラチノサイトの異常 レーザー治療が第一選択
肝斑 メラノサイトの異常であるが、増加はない。
治療の原則は内服薬VC VE,トラネキサム酸 外用薬VC VE,トラネキサム酸 ハイドロキノン
紫外線予防
QスイッチYAGレーザーを用いた レーザートーニング
雀卵斑 メラノサイトの異常 日光露出部に生じる色素斑
遅発性太田母斑様色素斑 メラノサイトの異常であり 真皮にメラノサイト様の細胞増加がある。
日光角化症 前癌病変である 疑った場合は組織検査
注入療法の合併症:出血、血腫形成、アレルギー反応、肉芽腫、炎症、感染、皮膚壊死、クロイツフェルト・ヤコブ病
Ⅳ.De DHEA療法
副腎アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン
体内で最も多く産生されているステロイドホルモンの一種
免疫賦活、抗糖尿病、抗骨粗鬆症、抗動脈硬化、肥満、腫瘍、中枢神経作用などいろいろ有益
日本人だと1日25mgでよい
今の所 DHEA療法が有効とする成績は副腎不全症例や明らかなアンドロゲン低下状態に限られている。
期待されていたほど、今の所良い結果が出ていない。
Ⅳ.Df キレーション療法
キレート剤により、鉛などの有害金属を体外へ排泄させる方法
動脈硬化治療と 有害金属の排泄促進
EDTA エチレンジアミン四酢酸 ethylene diamine tetraacetic acid
Na2- EDTA 骨以外への組織へのCa沈着を抑制 点滴で動脈硬化の治療に用いる
Ca- EDTA 鉛などの金属排泄目的
Ⅳ.E1 眼とアンチエイジング
外界の情報の80%は眼から
VC VE 亜鉛 銅の摂取で 加齢黄斑変性の進行が プラセボより25%減少
喫煙者にビタミンAを摂取させると肺がん増加する
ルテイン カロテノイドの一種 カロテノイドの豊富な食事をすると加齢黄斑変性のリスクが43%減少する
アスタキサンチン(サケ・いくら、甲殻類の橙色素) アントシアンも良さそう
Ⅳ.E2 皮膚とアンチエイジング
皮膚は成人で面積1.6m2 重量は体重の16%を占め、人体で最大の面積重量を有する臓器
皮脂分泌量は20代をピークに減少し、特に女性では50代以降、著名に減少するため皮膚の乾燥が悪化しやすい。
Ⅳ.E3 美容外科とアンチエイジング
しわ ヒアルロン酸 本来半年程度で吸収されるが
骨上に注入することにより半永久的な効果を誘導することも可能
Ⅳ.E4 毛髪とアンチエイジング
Hamilton/Norwood/Takashima分類
我が国では 頭頂部の脱毛が進行するタイプが多い
女性では、前頭部のヘアーラインが保たれ、頭頂の脱毛が進行する。
外用 ミノキシジル (リアップ)
内服 フィナステリド(プロペシア) 即効性はないが1年内服以後の有効率は80%以上
自毛植毛 毛乳頭細胞に男性ホルモンレセプターを発現しない後頭部毛包は移植しても男性ホルモンの影響を受けない。美容外科領域では、後頭部皮膚からの毛包単位移植が行われている。
Ⅳ.E5 口腔とアンチエイジング
ドライマウス 生活習慣病 更年期障害 ストレス
Ⅳ.E6 脳機能とアンチエイジング
運動性知能は20〜30代でピークに達した後加齢とともに低下するが、言語性知能はかなり高齢になるまで保たれる。
Ⅳ.E7 聴覚とアンチエイジング
難聴者は補聴器していると鬱傾向抑制
時間分解能が落ちているので ゆっくり話す
視覚情報も活用できるように 顔が見える位置で話す。
Ⅳ.E8 嗅覚とアンチエイジング
嗅覚は化学感覚であり、外界の揮発性の化学物質を感知する
当帰芍薬散
亜鉛
喫煙は嗅覚悪化させる。
Ⅳ.E9 味覚とアンチエイジング
味覚閾値は50歳くらいまでほとんど変わらない それ以降 徐々に上昇
唾液やアミラーゼ減少も影響する
レプチン 脂肪細胞から分泌され、主に視床下部に存在するレプチン受容体を介し、摂食抑制、エネルギー消費亢進に関与するホルモンとして知られる。
内因性カンナビノイドは大麻様物質で、中枢のカンナビノイド受容体を介して、レプチンと拮抗して摂食を促進させる。
Ⅳ.E10 呼吸器とアンチエイジング
COPD 喫煙 はじめは咳、痰 進行すると次第に低酸素血症や慢性呼吸不全に進行
息切れの症状は70歳以上でよく見られる。
まず禁煙
COPD増悪原因となるので インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンが推奨される
高度の気流障害があると 在宅酸素 通常の呼吸で動脈血の酸素分圧が55Torr以下 あるいは
動脈血の酸素分圧が60Torr以下で運動時や睡眠時に顕著な低酸素症を起こす場合
Ⅳ.E11 心臓とアンチエイジング
高齢者ほど、心収縮能が保たれている心不全になりやすい
高齢者の心不全の特長は 女性が多く、しばしば心房細動や高血圧、脳血管障害、貧血、悪性腫瘍、慢性腎臓病を合併する
高齢者になると弁膜症増える
開胸手術できない場合に TAVI transcatheter aortic valve implantation
Ⅳ.E12- 1 骨粗鬆症
骨粗鬆症になると、骨形成相が短くなる 通常4〜6M
骨吸収にくらべて骨形成が十分になされず 骨量が減少することになる。
椎体骨折 2/3は気づかない
脆弱性骨折があれば 骨密度にかかわらず 骨粗鬆症
骨密度が 若年成人平均値の70%以下の場合は骨粗鬆症 →治療開始
70〜80%の場合 WHO骨折リスクツールFRAXによる10年間の主要骨粗鬆症骨折リスクが
15%以上ないし大腿骨近位部骨折の家族歴があれば治療開始する。
骨密度の計測は原則として 腰椎または大腿骨近位部であるがこれらの測定が困難な場合には第二中手骨の骨密度とする。
Ⅳ.E12-2 変形性関節症
基本的に運動時の関節痛として発症 安静により軽快し、運動で増悪する。
NSAIDS
外用NSAIDS
関節内注射 ヒアルロン酸 ステロイド
Ⅳ.E12-3 変形性脊椎症と脊柱管狭窄症
腰椎に生じやすい 重労働などの負荷で進行
変性の程度と症状が一致しない
間欠跛行 歩行できなくなった際に、しゃがんだり座ったり、腰椎屈曲位で休息をとると症状が軽快し、再び歩けるようになるという特長がある
手術 責任高位の開窓、椎弓切除術など除圧
Ⅳ.E12-4 サルコペニア
筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの
握力と歩行速度で判定 男性26kg 女性18kg 歩行速度0.8m/秒
いずれか あるいはどちらかあれば筋量測定 →低ければサルコペニア診断に DXA法 BIA法
Ⅳ.E12-5 ロコモティブシンドローム
加齢に伴う運動機能の低下や運動器疾患により移動能力の低下した状態
運動器のアンチエイジング
習慣的な運動 バランスのとれた適切な量の食事
Ⅳ.E13 消化器系とアンチエイジング
アルコールの代謝酵素 アセトアルデヒド脱水素酵素 ALDH2
この酵素が正常かヘテロでアルコールが大量に飲めると食道がんの発生率↑
アルコール性肝障害も同様
脂肪肝 過栄養、酸化ストレス、低栄養でも生じる
非アルコール性脂肪性肝炎 nonalcoholic steatohepatitis NASH
脂肪性肝障害からNASHへの移行 肥満、50歳以上、2型DM,HTなど関連
胆石 女性、過食、肥満、多産経産婦、脂肪過多食、催石性薬剤 運動不足など誘引
ω6系の不飽和脂肪酸はアラキドン酸カスケードを通るため細胞毒となる
ω3系の飽和脂肪酸は、そのような経路は通らず、EPA DHAといった身体に優しい脂肪酸になる。
男性では加齢による血清脂質の変化はほとんどないが
女性では総コレステロール LDLコレステロール TGの上昇とHDLの低下を認め
さらに加齢によってコレステロールの合成が低下するにもかかわらず、血清LDLコレステロールの上昇が認められた。
Ⅳ.E14 腎臓とアンチエイジング
腎臓の機能低下は個体の機能低下
インスリン抵抗性 筋肉組織の崩壊を引き起こす
認知機能 インスリンの神経保護作用
持続的な高インスリン血症は、血液脳関門のインスリン受容体の発現を低下させ、脳内のインスリン濃度を低下させる。