あれ、においがわからない…
嗅覚が正常の人にとっては、嗅覚が障害されるとどれくらい困るのか?想像しにくいと思います。
「カレーのにおい」がわからないとだいぶ強めの嗅覚傷害というざっくりとした評価指標もありますが
程度を表現しにくいのが、嗅覚障害の特徴です。
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患者さんの声として よく聞かれるのは
「悲しいのは、嗅覚に障害を持っている悩みが 他の人にはわかってもらえないこと」
ということです。 匂いが分からなくても、他人からはわかりませんもんね...
このページでは、嗅覚障害の診断と治療について解説します。
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耳鼻科で早めに相談いただくのがベストですが、すぐに病院に行けない方のために
自宅ですぐに始められる治療についても提案します。
↓嗅覚がわからないとこんなことが苦手になります。↓
食べ物がおいしくない。
ガス漏れ、火事など生命の危険に関わるにおいに気が付かない。
季節の花の香りを楽しめない。
食材、料理が傷んでいるかどうかの判断ができない。
香水をつけすぎてしまう。
味付けが濃くなったといわれる。
調理師、調香師、アロマテラピストでは仕事を続けられなくなる。
嗅覚障害の原因
匂いがわからなくなる「嗅覚障害」の原因は大きく2つに別れます。
原因1:においの神経が障害されている
①に含まれるのは
感冒後嗅覚障害 (かぜの後ににおいがわからなくなる。コロナの後の嗅覚性もコレ)
頭部外傷
加齢による嗅覚低下
アルツハイマー病やパーキンソン病に伴う嗅覚低下。これらは抹消の嗅覚器よりもむしろ嗅球以降の中枢の伝導路の障害が示唆されています。
原因2:鼻が詰まっていて、においの神経に、におい分子が届かない。
②に含まれるのは
副鼻腔炎(←1番多い原因はコレ)
アレルギー性鼻炎
鼻中隔湾曲症など
嗅覚障害の検査
副鼻腔炎や鼻中隔湾曲症の評価のために副鼻腔CTを行います。
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嗅覚障害の程度を評価する検査はいくつかありますが、クリニックで行われることが多いのは
静脈性嗅覚検査といって、ニンニク臭のするアリナミン液を静脈注射してニオイの有無を確認する検査。アリナミンテストともいいます。
アリナミン注射液(一般名:プロスルアミン、10mg,2ml)を静脈内に注射。左上肢正中静脈に等速度で20秒かけて注入します。
注入開始からニンニクのようなアリナミン臭がわかるまでの時間を潜伏時間、においがわかってから消えるまでの時間を持続時間として測定します。
正常の場合、潜伏時間8秒程度、持続時間70秒程度とされています。嗅覚低下では、潜伏時間の延長と、持続時間の短縮が認められます。
感冒後の嗅覚障害では、慢性副鼻腔炎による嗅覚障害と異なり、アリナミンテストの反応の有無は必ずしも予後と相関せず、初診時のアリナミンテストで無反応のケースでも治癒に至ることがあります。
基準嗅力検査といって、5種類の基準臭をかがせて、嗅覚を測定する方法もありますが、一般のクリニックで備えているところは少ないです。
採血で、血清亜鉛の値を確認することもあります。
嗅覚障害の治療
#本来、治療については耳鼻科で診察を受けて、原因を検討してから、が望ましいです。
しかしながら、どうしても病院に受診できないような状況もあるかと思います。
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下記は、健康で薬剤アレルギーの既往など無い方が、感冒後(かぜの後)に嗅覚障害を生じたような場合
市販のお薬を用いて、ご自身で始められる治療について、参考までに記載します。
嗅覚障害がある場合は、お早めに耳鼻科でご相談ください。
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治療は、基本的に薬物療法です。
①意外かもしれませんが、漢方の当帰芍薬散がよく使用されます。ほかに漢方薬を内服しているときは必ず処方元で確認してください。生薬が重なる可能性があります。
当帰芍薬散:製品リンク
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② 鼻閉、特にアレルギー性鼻炎がある場合は鼻炎の治療
市販のお薬であれば このあたり
抗ヒスタミン薬:製品リンク(市販の製品の中では眠気など副作用の少ないものです。鼻閉、アレルギー性鼻炎のある方の嗅覚障害の場合併用することが多いです。)
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③ステロイド点鼻
市販薬にはマイルドなスプレータイプのものしかありません。病院処方では、目薬のような液状タイプのものが処方されることが多いですが、糖尿病や胃潰瘍など避けるべき状態の方がいらっしゃいますので、医師の確認下で使用されます。
ステロイド点鼻:製品リンク
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そのほか
神経賦活剤、ビタミンB12剤の服用なども行わることがあります。
中高年者で増加する加齢に伴う嗅覚障害については、当帰芍薬散などの漢方のほか亜鉛内服も経験的に使用されています。
私自身でも、いろいろ試してみて、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの無い嗅覚障害にはまず当帰芍薬散の処方にすることが多いです。
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近年、ヨーロッパの医師を中心に、臭素を用いたリハビリテーション(嗅覚刺激療法)も行われています。バラや、ユーカリ、レモンなどの臭素を繰り返し嗅ぐトレーニングが、いろいろなプロトコールで研究されています。
ざっくりいうと、長期間の治療、高濃度の臭素を用いた治療、より多種の臭素を用いた治療のほうが効果が高いようです。
嗅覚刺激療法は、嗅覚閾値(においを判別する能力)の改善には効果が小さいが、嗅覚弁別能(2つのにおいが同じか異なるかを判別する能力)、嗅覚同定能(何のにおいであるかを判別する能力)を改善させるということがわかってきています。
喫煙は嗅覚悪化のリスクファクターであり、禁煙が勧められます。
慢性副鼻腔炎や鼻茸、鼻中隔彎曲症などが原因の場合は、手術を行うこともあります。
においはどこで感じる?
嗅覚は化学感覚であり、外界の揮発性の化学物質を感知しています。
ヒトの嗅粘膜(においを感じるところ)は、鼻腔上方の、中鼻甲介、上鼻甲介と鼻中隔で作られた嗅裂という狭い空間に面する粘膜のさらに一部にのみ存在しています。
下図の 赤矢印 OLFACTORY EPITHELIUM(嗅上皮)の部分です。
においがわからないと、味覚も低下するように感じられるので食事が美味しくなかったり
ガス漏れに気が付かない、あるいは食物の腐敗に気が付かないなどの危険性もあります。
他院で治療したけれども、よくならないという方や、
ご家族にはわかるニオイが自分にはわからない、という方もご相談いただければと思います。
大阪 和泉市の耳鼻咽喉科
電話 0725-50-3333
耳鼻咽喉科専門医:中西 悠
手術はこちら↓で行います。
耳鼻咽喉科サージクリニック 老木医院
電話 0725-47-3113