このページでは 加齢性鼻炎について解説します。
高齢者で、水っぽい鼻水(水性鼻漏)のみを訴えられることがあります。
感冒(かぜ)やアレルギー性鼻炎を疑わせるようなくしゃみや、鼻閉などの症状はありません。
このような症状は欧米では古くから知られ、Old Man'd Drip (加齢性鼻炎)と呼ばれます。
加齢性鼻炎には、抗ヒスタミン薬や、ステロイド点鼻、マクロライド系抗生剤などがあまり有効でないことが多く
転々と耳鼻科クリニックをいくつも受診されているようなケースもあります。
Old Man's Drip の原因
加齢による鼻粘膜の萎縮、鼻粘膜の加温機能や粘液線毛機能の低下
個人差はあるものの、60歳以上では鼻粘膜は加齢性の萎縮が始まると考えられています。
鼻腔内の加温機能の低下により、吸い込んだ空気が十分に加温されないまま吸入されるため
鼻咽腔環境の温度が下がります。↓
一度、下気道に入った吸気、加温、加湿されますが呼気となって鼻咽腔を再び通過する際に
呼気中の水分が鼻粘膜上で凝集し水滴となり、水っぽい鼻汁(水性鼻漏)
になると考えられています。
若年者では、鼻粘膜の咽頭方向への粘液線毛機能により、鼻汁がのどのほうへ誘導されるのですが
高齢者ではこの機能の低下もあるので、水っぽい鼻水が 鼻の穴から前方に垂れる、ということになります。
Old Man's Drip の診断
1)水っぽい鼻汁があるのに、アレルギー性鼻炎に合う既往歴や症状、検査データがない。
2)アレルギー性鼻炎の治療が有効でない。
3)画像診断で副鼻腔炎がない。鼻甲介粘膜の萎縮がある。
4)鼻咽腔ファイバーで鼻粘膜の凹凸不整や萎縮を認める。
Old Man's Drip の治療
アレルギー反応は関与していないので、抗アレルギー薬の効果が乏しい。
加齢による鼻粘膜萎縮によって鼻腔温度が下がることが原因と考えられているので、これを防ぐための方法が治療になる。
1 足湯は簡単に鼻粘膜の温度を上げるといわれています。
2 温めた生理食塩水(39〜40度)による鼻洗浄を1日2〜3回
3 マスク使用
4 漢方薬 八味地黄丸 当帰芍薬散 等